三浦版 掲載号:2018年7月20日号 エリアトップへ

現場で学び、将来に活かす 学外実習に励む農業・水産専門科の高校生

教育

掲載号:2018年7月20日号

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流通過程を間近に市場の入札も体験

 海洋科学高校の蛭田壮(たけし)さんが実習に訪れる三浦市三崎のまぐろ問屋「西松」は、1894年創業の老舗企業。買い付けや水揚げ、冷凍まぐろの加工・販売、マーケティングのほか、高校実習船のサポートといった市場育成も手掛けている。

 この日は朝から同社の主力商品のひとつである、「無添加ねぎとろ」の製造ラインを担当。白衣、エプロン、マスク、帽子、手袋などを手際よく身に着けて工場に入ると、先輩社員に混ざって黙々と作業を始めた。

 目の前には、刺身でも食べられる上質なめばちまぐろの赤身がずらり。安心安全な食品を扱う責任を感じるとともに、色や部位を一つずつ確かめながら、筋や骨などを包丁で丁寧に切り分けていく。4月から実習がスタートして約3カ月。仕事の飲み込みの速さに、指導役も思わず舌を巻く。

 「進路に考えている食品製造業を幅広く学びたかった」。同社での実習に自ら手を挙げた理由を話す蛭田さん。「どれも学校では学べない貴重な体験ばかり。とても新鮮で、やりがいを感じている」と、ここまでの充実した学習の様子を振り返る。ねぎとろづくり以外にも、まぐろを保管する同社の冷凍庫や、関係者以外の立ち入りが制限されている今春開設されたばかりの三浦市低温卸売市場で入札の様子も間近で見学。原材料の調達から加工といった、食品製造の一端を知ることができたのは、大きな収穫だという。

 地域産業への興味も高まり、「今後は、さらに流通過程を学び、どのように三崎のまぐろが全国の消費者へ届くのかもっと知りたい」と目を輝かせた。

手掛けた「商品」食卓へ直売や加工に意欲

 炎天下の夏空、黙々と茄子の枝が倒れないように”誘引”という作業をしていた、齊藤輝(あきら)さん(三浦初声高校)。この日の午前中は、ねぎの定植を手伝っていたという。

 4月半ばから毎週木曜の実習日に、横須賀市林にある農家鈴木優也さんの畑に赴いており、「多品種を手掛けていて勉強になる」と汗をぬぐった。前週は加工場を見学し、収穫した野菜がその場で商品となっていく過程にも触れた。農業従事者が食品加工・流通販売にも業務展開する「6次産業」の現場。「野菜を作ったすぐ先に、こんな世界があるとは」と驚いた。

 祖母が同市内の武でキャベツとかぼちゃの畑を持っており、幼いころから農業は身近な存在。両親は家業を継がなかったが、農業高校への進学は自然な流れだった。担当教諭からは「知識はもちろん意欲があり、勉強熱心。期待している」と今回、横須賀商工会議所が進める「産農人プロジェクト」に送り出された。

 「おいしい野菜ができると嬉しい。それが農業の楽しさ」と笑顔が光る。実習では、鈴木さんから「消費者目線で農業を考えよう」との教えを受けた。「定番野菜を市場に出すことも農家として意義ある仕事だが、ニーズに合ったものを提供したい」との想いが芽生えた。実家の畑の作物を農産物直売所「すかなごっそ」で販売するための手続きをしている最中、祖母が急逝。後継ぎとしての責任感がさらに強まった。「今年の秋冬に、(すかなごっそで)自分の野菜を販売できれば」。高校生ファーマーがその先に見据えるのは商品加工。未来の”産農人”の自覚は十分だ。

夢は船の仕事人現場知り、魅力再発見

 「1年間の実習は、社会に出るための下準備」。海洋科学高校に通う川端秀乃介さんは、まぐろはえ縄漁船の漁撈機械の販売修理を請け負う「丸石製作所」で、船舶の機関装置などの知識と技術を習得する。

 かつて海軍の船乗りだった曽祖父、海上自衛官の叔父、水産業に従事する地元の知人など、周囲には海で働く大人が多かったこともあり、自ずと興味関心を持った。「子どもの頃は乗り物が好きで、純粋に船に乗ってみたかった」。授業のほか、疑問があれば自分で調べたりと、知識量を増やす努力は普段から怠らないが、それにも限界がある。「学校ではできない実務を体験することで、実践的な力が身につく。見ているだけでも勉強になっている」と笑みを見せる。

 今回の実習は、まぐろはえ縄漁船「事代丸」の枝縄巻取機を分解して修理点検するオーバーホール作業を担当。船から揚げられた巨大な装置を前に、はやる気持ちを隠せない。

 人一倍強い学びへの意欲。同社代表の大林孝さんは、「船が減り、漁撈機械の需要は減少傾向だが、こうして三浦の若者が興味を持ってくれて嬉しい。実習態度も真面目で、人材育成という面では企業としても有意義」と歓迎する。やるからには現場感覚を肌で感じてもらおうと、機械部品の組み立て・製作、船の見学なども行う。

 将来の夢は、船乗りになること。専門的に学んだことで、幼少期からの憧れは強くなる一方だ。「先生からは機関系に進み、機関長をめざしてはどうかとも勧められている」。残りの実習を通してさらに職業観を醸成し、“なりたい自分”を探す。

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