ふるさと納税の流出額が流入額を上回る「赤字自治体」の藤沢市が打ち出す”秘策”が奏功している。あえて大衆受けする返礼品ではなく、一部のマニアの心をくすぐる限定品を目玉に設定することで、他自治体と差別化。2019年度の寄付額は前年度比倍増した。市はこうした戦略が「一定の効果を生んでいるのでは」とみている。
江ノ電行き先板やレアドール
昨年10月、ふるさと納税サイト「さとふる」の同市ページに一風変わった返礼品が登場した。「藤沢―鎌倉」と記された金属製のプレート。「江ノ電300形」で実際に使用された行き先方向板だ。先着10セットで寄付額は15万円と高額だったが、開始わずか2分で”完売”。「予想以上の反響だった」と市財政課担当者は振り返る。
同市が返礼品を設けたのは2017年8月から。ふるさと納税は都市部ほど流出が多い傾向にあり、同市も17年度は約3千万円の流入に対し、約5億円が流出。翌18年度も約5千万円の流入に対し流出額は約7億円で、差し引き約6億5千万円の赤字だった。
一方、返礼品を巡っては、寄付獲得のため全国の自治体が豪華な商品で競い合う”返礼品競争”が加熱。現在返礼品は寄付額の3割以内と定められており、いかに独自色を打ち出せるかが課題となっている。
そこで市が目を付けたのが希少価値。「肉や果物などの定番は”売れやすい”が、競合も多い。特定の志向で関心を引けば、ページの閲覧数が増え、他の返礼品にも相乗効果が期待できる」。この狙いが的中した。
体験型も充実へ
江ノ島電鉄の協力で実現した方向板を成功体験に、19日には新たな返礼品を発表。現在放送されている人気テレビアニメ「アサルトリリィ」の限定ドールを、市内のドールメーカー「アゾンインターナショナル」の協力で提供する。提供は2種類5セットずつ、寄付額は10万円と高額だが、同課担当者は「行き先方向板と同様、いい反応があれば」と期待を寄せる。
こうした戦略に加え、返礼品の登録数も昨年から倍近く増え、現在310品まで充実。19年度の流入額は約1億円で前年度比倍増した。
今後はセーリングや工芸など藤沢ならではの体験型の返礼品を充実させていきたいといい、「重要なのは藤沢を応援してくれるファンを一人でも増やすこと。街の魅力を高めることを主眼に、今後も取り組んでいきたい」と話した。
藤沢版のトップニュース最新6件
|
|
|
|
|
|