遠藤で農業を営む小林俊和さん(75)が、約10年をかけて露地栽培したバナナが先月、JAさがみ(西山國正組合長)が運営する亀井野の直売所「わいわい市藤沢店」に出荷された。品種名は「アイスクリームバナナ」。市内産のバナナとしては初の出荷で、注目を集めている。
市北部の閑静な田園地帯に突如現れる南国情緒あふれる茂みは、小林さんが2014年から育て上げたバナナ畑だ。高さ4mほどの木の幹に、1本約10cmの緑色の実がなっていく。
花が咲き、6房ほど実がつくと花を切る。「花が養分を持っていくから」と小林さん。80日後に実を収穫し、約25℃の室温を保てる育苗用ビニールハウスで熟成を助けるリンゴとともに吊るし、色が着くのを待つ。
「植えてから3年と100日でやっと1房ができる」。寒さに弱く、冬は葉が枯れた後、太い幹の中を巡る水分が凍らないように、ビニールを巻く。農薬は使わず、肥料の袋を幹にまとわせて生育。今年は7月中旬に開花し、徐々に実がなり始めたものの、寒暖差が激しい季節の変わり目であることもあり、毎日の見極めが難しい。
「採算は取れない。趣味みたいなもの」と微笑むが、その食感はねっとりとし、味はさっぱりとした甘さを持つ。「冷凍庫に入れておけばそのままアイスクリームにもなる」とも。これまでは自宅や親戚、近所などで消費していたが、今年は例年より多くの花が咲き、かねてより目標としていた出荷に踏み切った。
遠藤で代々続く農家に生まれ、JAに勤務。その後、自身の畑で農業に従事した。バナナ栽培を始めた理由は「変わったものを作りたかったから」。これまで4色のニンジンも出荷するなど挑戦を重ねてきた。「他と同じものを直売所に出しても売れない。競争しないことが大事」と話す。
最近、偶然通りかかったベトナム出身の人が「葉を譲ってほしい」と話を持ち掛けてきた。聞けば、現地ではバナナの葉に米を包んで食べる文化があり、「『祖国の風景のようだ』と言って感動していた」という。
出来栄えに「一度食べたらファンになる」と小林さんが太鼓判を押すバナナは、2本入り1袋400円(税込)。同直売所には11月下旬、遠藤に霜が降りるまでの出荷を予定している。
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