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公開日:2023.09.29

「犯罪被害者の支援拡充を」
防犯団体の大津代表

  • 犯罪被害者支援について講演する大津代表=今年6月・大船観音寺

 10月3日は「犯罪被害者支援の日」-。犯罪や交通事故の被害者、その家族に対してこれまで不十分とされていた支援について、政府は今年6月、国が支給する給付金額を大幅に引き上げる方針を決定。1年以内に制度を整備するとした。被害者の声にも耳を傾けてきた防犯団体・鎌倉ガーディアンズの大津定博代表(60)は、「経済面、精神面でさらなる支援が必要」と訴える。

 「犯罪被害者支援は非常に大切なことだが、日本は遅れている」。イベントや学校で講演する際、鎌倉ガーディアンズの大津代表はこう切り出す。100人から成る県内最大規模の防犯団体として、地域安全活動にあたる中で犯罪に遭ってしまった人から話を聞くこともある。「犯罪被害者の苦しみは、犯人が捕まったら終わりではない。空虚感や孤独感は続いていく」

 例えば、被害者を刺した加害者が自分も負傷したとする。逮捕され、身柄拘束された加害者の治療費は公費で負担されるが、被害者には支払われない。さらに、加害者には留置所や拘置所での食費が支給され、被服費なども出る。一方、被害者や遺族は損害賠償金を求めても、加害者に資力がなかったり、長期受刑者になったりして全額支払われないケースが多い。

 国は1981年に犯罪被害給付制度を創設し、被害者や遺族に一時金を支払ってきたが、その額は十分とは言い難い。交通事故の自動車損害賠償責任保険(自賠責)は死亡時の平均額が約2400万円なのに対し、被害者給付で21年度に遺族へ支払われた平均額は665万円と4分の1程度にすぎない。

 「日本の財政支援は、欧米の国と比較しても大きく劣っている」と大津代表が言うように、22年度の警察庁の調査によると、総支給額はドイツが約478億円、フランス約391億円、米国約379億円などに対し、日本は約10億円にとどまる。公的支援を巡っては政府が引き上げの方針を示したのを受け、10月1日から警察庁が専門部署を新設し拡充を図る。

支援条例の制定県内は9市町のみ

 日本では、04年に犯罪被害者等基本法が制定。鎌倉で防犯に取り組んでいた大津代表は、神奈川県にも支援拡大を提案し、09年に神奈川県犯罪被害者等支援条例が施行された。それにより、被害者や家族が相談したり、カウンセリングを受けたりできる「神奈川被害者支援センター」(横浜市神奈川区)が設置された。

 同センター副理事長の堀本久美子弁護士は、自宅で犯罪に遭った際の転居先の紹介、被害者が困窮した際の生活保護申請を例に挙げ、「日々の生活を支えていくには、1番身近な基礎自治体での支援が重要。市町村で支援条例をつくるべき」と話す。

 現在、被害者支援に特化した条例制定は、県内33市町村のうち横浜市や茅ヶ崎市など9市町。相談対応や見舞金支給、住居や雇用のサポートなどを行う。犯罪抑止に汗を流す大津代表だが、「どうしても犯罪に遭う人が出てしまう」と唇を噛みつつ、「鎌倉でも条例などによって犯罪被害者を救える環境を整えてほしい」と願う。

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