曺貴裁(チョウキジェ)前監督のパワハラ騒動に揺れた湘南ベルマーレの2019年。社会問題として世間をにぎわせ、悲壮感漂うチームは勝ち星から遠ざかった。J2降格危機に陥るなか、成績と反比例するように団結力を強めたサポーターたち──。応援の指揮を執るコールリーダーの茅ヶ崎在住・高橋修さんに話を聞いた。
昨年8月11日、敵地で行われたジュビロ磐田との一戦で湘南ベルマーレが勝利。直近5試合で4勝と上昇気流に乗り、上位進出も視野にとらえ始めていた。仲間たちと気分良く帰路についた高橋さんの元に知人からLINEが舞い込んだのは、東名高速道路の厚木ICを降りた時のことだ。
「チョウさんって辞めるの?」
晴天のへきれきだった。夢中でスマートフォンで検索し、たどり着いた監督のパワハラ疑惑を報じる記事。事態が飲み込めず、気が付くと平塚市内のクラブハウスに車を走らせていた。時刻は午前2時を回っていた。
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それからは連日さまざまな報道が流れ、ネット上ではベルマーレのサポーターも擁護派と否定派でぶつかりあう日々。Jリーグによる事実関係の調査も始まった。
コールリーダーとして前監督と接する機会も多かった高橋さんは、「熱すぎる人だけに、パワハラと受け止められることもあるだろう」と一連の報道に納得する部分もあった。だが、こうも言う。「熱さの背景で、誰よりもベルマーレのことを考えている人だった」
ふがいない試合でブーイングをすれば、「文句は俺に言え」とサポーターの元へ飛んでくる。あるいは、「負けでもズタボロになって頑張った。もっと盛り上げて」「子どもからお年寄りまで歌えるアンセム(応援歌)をつくって」と注文も多かった。しかし、それはサポーターを貴重な戦力と評価していたからこそ。「起こした問題を容認はしない。でも、残した功績を否定するのは違うと思う」
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ベルマーレは騒動の発覚以降、まったく勝てなくなった。2試合連続で屈辱的な大敗も喫した。それでも、サポーターはヤジを飛ばすどころか、前向きな言葉と拍手を送り、うつむく選手を励まし続けた。
「一番きついのは選手や健二さん(監督代行を務めた高橋コーチ)。支えられるのは俺たちサポーターだけ」。リーグ最終戦で引き分けてプレーオフにまわることが決まった時も、「俺らのクラブを、俺らの声で、死ぬ気でJ1に残しましょう」。高橋さんの呼び掛けに応じ、サポーターも最後まで前向きな姿勢を貫いた。
ずば抜けて能力が高い選手はいなくても、団結力で立ち向かうのがベルマーレの持ち味。「サポーターも同じ。人数は多くないけれど、スタンドが一体になったらビッグクラブに勝る雰囲気」
かつてないほど大きな困難に直面したベルマーレ。だが、家族的なクラブの絆を再確認できた一年ともなった。塾講師の顔をもつ高橋さんは、「残留できてホッとしたけれど、受験シーズンが終わって2日後にはルヴァン杯が開幕。少し休みたいんですけどね」と満面の笑みを見せた。
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