平塚・大磯・二宮・中井 社会
公開日:2026.11.07
必要とされるから 残っていく 地域に開かれた寺院へ「 東光院」
古くから地域の拠点となってきた寺院。かつては子どもたちに読み書きを教え、病人に薬草を煎じ、戸籍管理に近い役割を担った時代もあった。一方で、近年は宗教意識の希薄化や檀家の減少など、寺院を取り巻く環境も変化している。これからの社会で寺院の果たす役割とは、あるべき形とは。大磯町大磯の東光院では、新たな道を模索し続ける。
大磯港からほど近く、風に乗って潮の香が届く小さな境内に、子どもたちの声が響く。鎌倉時代に開かれたという東光院には、放課後の小中学生や退職後の穏やかな日々を過ごす高齢者など、さまざまな人が集う。
客殿を改装したフリースペース「海近寺巣(うみちかてらす)」が開設されたのは、今から10年ほど前。「法事の待合スペースだったのですが、平日はほとんど使われておらず、もったいないなというのが最初でした」と、寺務の古井昇空さん(46)は振り返る。気軽に土足のまま入れて、普段から使える場所にと、テーブルと椅子を揃えた。仏教関連の書籍がズラリと並ぶ本棚には、今では子どもたちに人気の漫画が彩りをそえる。夕方になると、宿題をする小学生やテスト前の追い込みに励む中学生たちでにぎわう。
この他にも同院では、無料で医療や介護の相談ができる「暮らしの保健室・安養」を毎月2回開くほか、隣接する木造の一軒家では毎週2回、多世代食堂「おむすび」を開催する。食堂に集まった参加者が自分たちで調理し、一緒に食べて、片づける。食堂を通して人と人がつながることで、地域に縁を生み、深めていく。「いろいろな活動ができるのも、地域の皆様の理解があるからこそ。本当に感謝です」と、大澤暁空住職(41)は目を細める。
過去には、本堂にピアノを置いてジャズライブを開催し、ヨガや朗読会なども開催してきた。
歴史や伝統を重視する寺院で、ここまで施設を開放することに抵抗はなかったのか。「これまでは『お寺である』というだけで社会に残っていくことができた。でも今は、必要とされていなければ無くなっていく時代だと感じています」。そう語る古井さんの言葉は、穏やかな口調なれど重い。「大昔は生活に必要な水くみ一つでも大仕事で、一人では生きていけなかった。だからこそ人々が互いに支え合って生きた。それが現在では一人でできることが増えて『孤立できる社会』になってしまった」と現代社会のゆがみを説く。「私と住職は、このお寺と共に生き、ここに骨を埋めると決めている。だからこそ、ここから逃げずに、地域のソーシャルワーカーとなるんです」。変革を恐れない行動力は、その決意があるからこそ。
必要とされる寺院となるために、何ができるのか。地域を見つめ、固定観念からの脱却はこれからも続く。
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