大磯歴史語り〈財閥編〉 第71回「浅野総一郎㉑」〈敬称略〉 文・武井久江
浅野総一郎の像
年内（今号入れてあと1回）で浅野総一郎を完結と、編集者に告げたものの、語り尽くせない事ばかり。大磯歴史語りとしては、大磯との関係をお話しします。
明治23年、現・安田不動産大磯寮の地を別荘として所有し、後に同郷の先輩である安田善次郎にその地を譲り、大磯で１番最初に桜が咲くと言われていた所で、１国を大磯より平塚に向かう途中にマクドナルドが有ります。その向かいの11メーター道路の突き当りが、浅野の大磯の別荘でした。この広い道路は、園遊会を開いた時に関東近隣からのお客様を迎える為に浅野が作った道路です。湘南平から高麗山を抜けて治水工事もしました。晩年、食道狭窄症（食道癌）の宣告を受けた時、しばし静養に来ましたが、この時にも不屈の精神で、癌ならあと５年ぐらいしか生きられない、ならゆっくりしてはいられない、まだやる事が山積みだと、三田の紫雲閣に戻ってしまいました。
私は２週間ほど前に、別の仕事で北九州の小倉に行ってきましたが、この地の開発にも浅野が関わったと知り、さすが浅野さんと私は思いましたが、年月が経つと地元の方にはその実体は解らず、町名だけ残っていました。小倉駅北口浅野町、小倉埋め立ては浅野の晩年の大事業でしたが、今は町名が残るのみでした。そんな浅野の事業を全て語ることは出来ませんが、明治39年４月に勲五等双光旭日章を授けられた時に、成功の秘訣を聞かれ「決心・勤勉・根気・節検・健康・信用」と語りました。その浅野の関心は、外油に向けられ「重油で動く船」です。
日本は大した資源が有りません、その事に浅野はここ数年、痛感していました。これからは、外国の豊富な油田から原油を輸入し、それを日本で精製すべきで、既製品を外国から買っていたら、日本のお金を外国に持っていかれるばかりだと、浅野を「日本で初めて輸入原油を精製しようとした男」、そして、次は化学と水力発電、妻サクの名前を付けた水力発電の事は、前回にお話ししていますね。
更に次は、ゲーリーシステムと呼ばれる教育で、学問だけでなく実務も教えることを主眼とした学校で「学問・実技・スポーツ」の総合学校、「浅野総合中学校」を設立しました。大正９年４月１日、横浜市子安の丘の上に開校しました。中高一貫教育の男子校で、現在は神奈川県でも屈指の進学校です。其の学校の校内に大正13年に、浅野の喜寿を記念して、浅野という人間に共鳴した人、25万人が１人20銭ずつ出し合ってできた銅像です。
今回はその写真を掲載しました。では、最終号へ。
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