緑区 社会
公開日:2026.10.22
東京科学大 伊賀・小山教授 日本学士院賞の栄誉 未来を拓く「小さなレーザー」
町田市在住で、東京科学大学・栄誉教授の伊賀健一氏と小山二三夫氏がこのほど、第116回(2026年)「日本学士院賞」を受賞した。受賞対象は「垂直共振器型面発光レーザの実現・性能向上と応用展開(共同研究)」。本紙は10月2日、同大学横浜キャンパス(長津田町)の未来産業技術研究所で、両氏の研究についてインタビューを行った。
小さいことはいいことだ
今回受賞したのは、小さな領域から垂直に光を出すことができる「面発光レーザー」の実現から応用に至るまでの研究。実現が難しいと言われていた構造のレーザーだったが、伊賀氏が50年ほど前に克服する方法を着想し、2年後に動作を実現、現在まで性能を向上させてきた。
従来の半導体レーザーが長さ1mmだったのに対し、面発光レーザーは約1㎛(1000分の1mm)の微小な構造。2つの反射鏡で光を共鳴させることで、従来の約100分の1程度の小さな電流で発振させ、低消費電力で高速かつ大量のデータ通信を可能とした。伊賀氏は「『小さいことはいいことだ』の一言に尽きる」と言う。
そのほか波長が変えやすく、大量生産、面配列が可能となった革新性から、着想した本人にも「思ってもみなかった」方向への応用が広がっていったという。例えば、光学式マウスやレーザープリンター、3次元顔認証、データセンター、自動運転用の車載センサ(LiDAR)など。ヒューレット・パッカードや富士ゼロックス(当時)、アップル、エヌビディアといった名だたる企業が製品化した。
伊賀氏は「研究室で囲っていないで、『面白いから何かやってみないか』と講義や講演を通じて世界に呼び掛けて回った。応用はいろいろなことをやっている人が集まったときに生まれてくる。今では世界に認められていることがうれしい」。面発光レーザーは25年以上、社会や産業に大きな貢献を果たした電気・情報工学分野の歴史的業績に与えられる「IEEEマイルストーン」の認定も受けている。
AI時代に欠かせない
今後ますます期待されるのは、AIインフラを支えるデータセンターでの活用。AIの学習や推論には膨大なデータ処理が必要で、データセンターの消費電力増大が世界的な問題となっている。消費電力を抑える方法で課題解決を目指すときに「面発光レーザー」が多大な役割を果たすという。世界で初めて室温連続動作を実現した小山氏は「面発光レーザーは消費電力が桁違いに小さく、並列に並べて一括で大量のデータを転送できるので光ファイバ束と相性が良い」と言い、「AI利用が加速度的に増えている昨今は、この業界が活況になっている」と話す。現在稼働しているデータセンターにおいても短距離光通信の80〜90%に面発光レーザーが使用されているという。
小山氏は「応用を考える人が世界中にたくさんいて、それに伴い新しい理論的な研究が必要になる。このサイクルが50年間続いてきた。工学研究は世の中に使われることが重要だが、次に何が出てくるかは現時点では分からない。それが面白いところ」と語る。
11月16日にセミナー
両氏は11月16日(月)、同大学横浜キャンパスで開催されるセミナー『レーザーと知能がひらく未来技術』に登壇する。一般向けに噛み砕いて研究の発端や未来について解説する。詳細は同大学未来産業技術研究所HPへ。
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