構想から約20年、鶴見区文化協会や鶴見歴史の会の会員・齋藤美枝さん=東寺尾北台在住=がこのほど、曹洞宗大本山總持寺の歴史などをまとめた一冊、「鶴見 總持寺物語」を出版した。
◆ ◆ ◆
「鶴見駅のこんもりした森を、鶴見の人たちは『本山』と呼んでいた。子どもたちのふるさとを知りたい」
結婚を機に福島県から鶴見へ転居した齋藤さんが、總持寺を題材にしたのは、そんな思いからだった。
「知りたい」という探究心から、輪島市門前町の祖院にも出向いた。初めは福井県の永平寺と總持寺が、曹洞宗の二大本山であることも知らなかった。永平寺を訪れた際に出会った案内書を読み、「鶴見にも總持寺を解説してくれる本があればいいのに」と思った。
◆ ◆ ◆
1999年、放送大学に入学。卒業研究として「曹洞宗大本山総持寺の首都圏移転とまちの変遷」をまとめた。出版に向け、本格的に構想を練りだしたのは08年10月ごろ。「總持寺移転100年を記念してまとめないか」という声に応え、卒業研究の加筆修正を始めた。
◆ ◆ ◆
「移転100年記念、大本山總持寺が大きなプレッシャーだった」
個人の趣味とは違う。一文字書いては百字消す、1カ月以上1行も進まないときが何度もあった。
めどがついた今年3月11日、故郷いわき市が震災に見舞われ、家族や親類が自宅に避難。悲惨な光景が目に浮かび、筆は止まった。それでも、支えてくれた多くの人たちのため、11月の總持寺移転記念の2カ月ほど前、必死にまとめ上げた。
◆ ◆ ◆
總持寺で12月20日、出版を祝う会が行われた。約90人が出版を称えた。会の中で同寺の乙川暎元監院老師は、「大本山を鶴見の宝だと言ってくれた。嬉しいと同時に責任を感じる。上梓に感謝したい」と話した。
檀家でも鶴見出身でもない齋藤さんは言う。「京浜工業地帯の発展、政教分離、禅の道場であったことなどから、第二次世界大戦後、總持寺と鶴見のまちの関わりは薄れてしまった。またお互いに歩み寄り、豊かな関わりを築く架け橋になれば」。まちの発展を願う。
◆ ◆ ◆
全238ページ。定価1500円。總持寺売店または鶴見ふれあい館(豊岡町14―27、【電話】045・582・5458)で販売中。
鶴見区版のローカルニュース最新6件
|
|
|
|
|
|