川崎区・幸区 人物風土記
公開日:2023.02.10
無量院の第34代住職を務める
大久保 信祥さん
幸区小倉在住 59歳
たゆまぬ向上心
○…創建は不明ながら文保二年(1318年)と彫られた板碑から鎌倉時代にはあったとされる無量院。その第34代住職に就任し間もなく1年を迎える。寺の経営、檀家の管理などお経を唱えるだけではない住職としての仕事に古刹を守る重責を実感している。
○…寺に生まれ、自然に跡を継ぐものと思っていた。一方で外の社会も知っておきたいと、大学卒業後は証券会社に勤務。「お金の計算など、今の寺の経営に生きている」という。4年半勤めた後に得度。60日間の修業を経て、さらなる知識習得のために滋賀県にある天台宗の僧侶育成学校「叡山学院」に学んだ。卒論完成間近に阪神・淡路大震災が発生。3日後にはボランティアで神戸入り。「臭いや本当の悲惨さはTVでは伝わらない」。何事も実際の経験が大事だと学んだ。
○…「向上心が強い」と自己分析。スキー、スノーボード、ダイビングは趣味に止まらず、インストラクターの資格を持つ。47歳の時には儒教、道教など仏教以外の宗教を学ぼうと早稲田大学文学部東洋哲学科に入学。僧侶になってからは仏教の声楽ともいえる叡山学院で学んだ声明(しょうみょう)に取り組む。天台聲明音律研究会の会員として国内外を公演で巡り、欧州、アメリカ、中国、ブラジルなど何十カ国回ったか分からない。今は後進の指導にも力を入れる。
○…僧侶の仕事で一番大変なのは戒名をつけることだという。「その人の生き様、趣味、生い立ちなどから総合的に考える。3日かかったこともある」と故人への最後の贈り物に妥協はない。目下の悩みは庭の砂利を平に手入れしても2日もすると寺に居ついた猫のせいでデコボコになること。「法要よりも掃除がメインの仕事かな」ととぼけた顔を見せる。
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