猛烈な雨と崩れやすい地質によって大きな被害があった広島市北部の土砂災害。川崎市内でも過去に土砂災害による大きな被害があり、現在でもその懸念は大きい。川崎市北部を中心に市内では「土砂災害警戒区域」が759カ所指定されている。
広島の土砂災害の大きな原因は3時間で200ミリ以上の猛烈な雨量に加え、「まさ土」と呼ばれる崩れやすい地質にあったとされる。被害を拡大させた要因として丘陵地の宅地開発を指摘する声もある。
土砂災害を研究する一般財団法人砂防・地すべり技術センター(東京都千代田区)の専門家は「強い雨が降れば、広島で発生したような災害が神奈川県内で発生する可能性は高い。川崎北部はここ数十年、崖崩れが発生するような場所に人家が建ち、宅地開発が進んでいる」と指摘する。
市内の地質は主に関東ローム層で「まさ土」と比較すると安定しているといわれる。だが、昨年度は多摩区や麻生区の5カ所で崖崩れが発生し、過去10年では市内21カ所で起きている。89(平成元)年8月には台風の影響によって高津区蟹ヶ谷で6人が死亡する崖崩れもあった。
国が01年に土砂災害防止法を施行し、各都道府県が「土砂災害警戒区域」と「土砂災害特別警戒区域」の指定を進めてきた。全国で指定が進まない課題が浮き彫りになっているが、川崎市内では川崎区を除く6区で合計759カ所が警戒区域に指定された。特に丘陵地に宅地が広がる麻生区や多摩区、宮前区、高津区に集中している。
難しい避難判断
想定以上の雨量を記録し、未明に襲った今回の土砂災害は避難勧告・指示のあり方にも大きな課題を突き付けた。
川崎市の場合、避難勧告・指示は風量や雨量をみてマニュアルに従って判断するという。住民に情報を伝える手段は▼市内各地に設置されている258機の防災行政無線▼車両による広報▼メールニュースかわさき「防災気象情報」の配信▼緊急速報エリアメールの配信――などがある。9月1日には各情報メディアに災害情報を発信するシステムLアラートを県内の自治体で初めて導入した。
市総務局危機管理室の担当者は「広島のようなケースの場合、避難指示は難しい判断になる」と話す。
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