高尾山薬王院の第三十三世貫首に就任した 佐藤 秀仁(しゅうじん)さん 狭間町在住 50歳
山の呼吸 生きる力を
○…日付は6年前のもの。昨年10月、開いた書にはその名前が記してあった。大山隆玄前貫首はそれほど前から後任と決めていた。「自分は拾ってもらった口。頭の中が真っ白になりました」。成田山、川崎大師とともに真言宗智山派の関東三大本山の一つ。およそ1300年の歴史を持つ古刹における最高位の僧、「高尾山の主」となった。
○…祖父はバイオリニスト、祖母はオペラ歌手。英語を話しボクシングもしていた父親だが、縁あって僧侶の道へ。だが、若くしてこの世を去る。「自分が8歳の時でした」。ある修行で、父親も歩んだ山道を登った。いくつも岩を乗り越え頂上に立ったとき、はじめて父親を「近くに感じた」そう。以後、お経を上げる声も大きくなり「あのときから自分が変わった」と振り返る。
○…太くやわらかな声を持つ。「正座をして大きな声を出すには腹式呼吸になる。自然とこういうものになるのではないでしょうか」。様々な団体から卓話を頼まれることも多い。「難しい話は雰囲気にはなりますが。自分は理屈でなく、見たことや聞いたことを話すようにしています」。学生時代からの趣味はサーフィン。ハードなマリンスポーツは修験道にもつながると語る。
○…父がいなくなったあと、面倒を見てくれる人たちがいた。「山本様(三十一世)は自分を孫のようにみていただき、大山様は寺を守っていただきました」と深く感謝する。「拾ってもらった」と話すのはそのためだ。2人の「揺るぎない愛山護法の精神」を継承する。「ここではどんな小さな虫も草も、500年の大杉も精いっぱい生きている。呼吸をして体全体で受け止めてほしい。毎日の生活の隅々まで力が行き届くはず」
|
|
|
|
|
|