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消えゆく織物工場 記憶に 解体前に公開イベント

文化

掲載号:2022年1月1日号

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人数を制限し市民に公開された織物工場。一部の織機は保存されていくそう
人数を制限し市民に公開された織物工場。一部の織機は保存されていくそう

 市内のある織物工場が今月、姿を消す。その場所が区画整理事業の対象となっており、戦前に建てられた織場と母屋の解体が決まっている。そこにはかつて織物の産地として栄えた八王子を支えたいくつもの織機があり、また工場で暮らす人の生活の跡も残っていた。昨年12月、公開イベントが開催され、「この街の原風景」は様々な人の記憶に焼き付けられた。

のこぎり屋根 「この町の原風景」昨年12月 全23回埋まる建設は戦前

 八王子は1914年(大正3)、変電所が設置されたことで地域の機屋に力織機の導入が始まった。電気のおかげで生産能力は向上し35年(昭和10)には八王子の産業における織物業の工場数は八王子全体の97%、従業員、生産額は全体の95%を占める圧倒的な数字であった。

 まさに「織物の町」となった八王子で「その工場」は戦前に建てられたと推測されている。50年代に本格的に稼働しだし20台の織機を有し10数人の「女工」が住み込みで働いていた。工場ではネクタイ、毛織物、マフラー、小物類などを生産していた。

 その工場、中野山王の「原島織物工場」は建てられて少なくても80年が経った現在も、当時の姿を「ほぼそのまま」残していた。およそ15年前から稼働はしていなかったが、建物や織機は現在の所有者である創業者の4男が丁寧に管理をしていたのだ。「作業場だけでなく女工さんの部屋など、その生活も伺える建物でここまできちんとあるのは大変貴重」。今回のイベントを企画したひとり、染色家の奥田博伸さん(42)はそう説明する。

なくなることに驚き

 奥田さんは原島織物工場の近くに自らの工場を構えている。一方で地域課題を解決する取り組みとして3年ほど前から若者らと「のこぎり屋根」の調査をしていた。のこぎり屋根とはその形がのこぎりの刃の部分のように尖っているもので、特に織物工場に多く見られる。原島織物工場も「のこぎり屋根」であり、奥田さんは以前からその存在を気にかけていた。

 そのような中、奥田さんはふとした機会に工場の解体について知って驚いた。直接話を聞こうと工場に行って中を見てみると、その「しっかり残っている姿」にまた驚いた。

 「ここには織物と暮らしがあった時代の原風景がある。記録に残すとともに多くの人の記憶に刻むことができないか」。奥田さんは強く思った。

主「仕方ない」

 奥田さんがたまたま八王子市から、日本遺産に関連する「織物の町」についての調査を依頼されていたことがきっかけで、解体前の最後のタイミングで公開イベント開催の運びとなった。このイベント「街と織物」は日本遺産「桑都物語」推進協議会の主催で昨年12月の12日間、合計23回開かれた。すべての回が予約で埋まるほど市民らの関心は高かった。

 協議会では今後、VR(ヴァーチャルリアリティー=仮想現実)で「この場所」を見られるようにする計画だ(3月公開)。また、工場にあった一部の織機は八王子で製造されたものもあり、それらは市が保存する予定という。

 「時代の流れだから仕方ない」。同月中旬、敷地内の片づけに訪れた建物の主、原島武材(たけき)さんに声をかけるとそう応じた。ただ、原島さんは工場を使わなくなっても手放すこともなく、長い間ずっとその姿を守ってきた。「やっぱり生まれたところだからね」

1200が20に

 八王子織物工業組合によると織物業の「最盛期」と言われる1966年(昭和41)の組合加盟の会社数は1228社。それから55年、2021年(令和3)の加盟社数は20社弱まで減っている。

◆参考資料...「街と織物」(日本遺産「桑都物語」推進協議会発行)

イベントをとりまとめた奥田さん。工場の解体は残念だが「何ができるか?」と考え、記録と記憶に残す取り組みをした
イベントをとりまとめた奥田さん。工場の解体は残念だが「何ができるか?」と考え、記録と記憶に残す取り組みをした
昨年12月に開催された公開イベントの様子。愛知県出身のテキスタイルデザイナー、小島日和さんが「のこぎり屋根」の原島織物工場を案内した。帽子はのこぎり屋根をデザインしたもの
昨年12月に開催された公開イベントの様子。愛知県出身のテキスタイルデザイナー、小島日和さんが「のこぎり屋根」の原島織物工場を案内した。帽子はのこぎり屋根をデザインしたもの

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