2020年の幕開け―。令和の時代に突入し、今年は56年ぶりのオリンピック・パラリンピックイヤー。ホストタウンとなる厚木市内も盛り上がりを見せている。本紙では新春恒例となっている市長インタビューを実施。新たな総合計画をはじめ、市庁舎の移転計画など、これからの厚木の未来への展望などを小林常良厚木市長に伺った。(聞き手/本紙編集長 府川美穂、副編集長 勝浦勝、撮影/吉松英輝)
―新年あけましておめでとうございます。小林市政4期目も1年が終わろうとしています。まずはこの1年を振り返っての総括をお願いします。
明けましておめでとうございます。皆さまにおかれましては、希望に満ちた輝かしい新春をお迎えのこととお喜び申し上げます。
昨年、私が選んだ市政運営のテーマは「大志」です。先人が築き上げてきたこのまちの更なる飛躍のために「日本一のまち」を目指すという大きな志をもって、市民の皆さまと共に「市民協働」「現地対話主義」を信念としたまちづくりに全力を尽くしてきました。
この1年を振り返りますと、災害や交通事故、事件などの話題が絶えない1年だったように思います。特に印象に残っているのは、窃盗などの罪で実刑が確定した容疑者が逃走した事件です。容疑者が確保されるまでの間、小中学校の休校やイベントの中止、外出の自粛などを余儀なくされましたが、パトロールなどの見守り活動に多くの皆さまのご協力をいただき、本市が誇る「市民力」に支えられたと心から感謝しています。私も強い憤りを感じながら国や関係機関に対して要望活動をする中で、改めて、市民の皆さまが安心・安全に暮らせるまちづくりを進めていかなくてはならないと、決意を固くした1年でした。
また、あつぎ郷土博物館のオープンも忘れられません。市内初となる博物館は、展示・収蔵設備を充実させ、これまで公開できなかった貴重な厚木の文化財を展示できるようになりました。オープンからわずか2カ月で来館者数1万人を達成し、1年間で約4万人の方々にお越しいただくなど、市民の皆さまの大きな期待や関心の表れを実感しています。
―3月に向け、2020年度予算査定も大詰めを迎える頃ですが、どのような方針で予算編成を進めていますか。
2020年度は、第9次厚木市総合計画「あつぎ元気プラン」が最終年度を迎えます。今回の予算編成では、将来都市像「元気あふれる創造性豊かな協働・交流都市あつぎ」を実現するため、六つの重点プロジェクトである、「人口の将来展望を実現する地方創生の推進」「誰もがいきいきと生活できる地域包括ケア社会の実現」「将来にわたって活力あるまちであり続けるための都市基盤整備の推進」「防災・減災対策の強化による安心・安全の推進」「2020年東京オリンピック・パラリンピックを契機としたレガシーの創出」「中心市街地の魅力や利便性の向上」を中心に、重点的な予算配分を行っています。特に、「安心・安全」につながる取り組みについては、次代を担う子どもたちをはじめ、市民の皆さまの大切な命と暮らしを守り抜くために、引き続き、積極的に推進を図ってまいります。
全ての事業は市民の皆さまのために実行するということを常に意識しながら、「あつぎ元気プラン」の集大成に向けて取り組むとともに、一歩先の未来を見据え、次期総合計画に確実につながるよう、予算編成を進めているところです。
厚木市長インタビュー続き”大きく変わる”日本一のまちへ
―2020年は東京オリンピック・パラリンピックが開催されます。ニュージーランド(NZ)のホストタウンとしてゴルフや車いすラグビーなどのキャンプ地となる厚木。開催に向けた展望、市内への活用についてお願いします。
本市は2016年からNZのホストタウンとして事前キャンプの誘致をはじめ、スポーツ、文化、教育などのさまざまな分野で交流を深めてきました。
この交流も今年で5年目を迎えます。本市としては、NZの選手たちが、万全の体制で大会に臨めるようバックアップすることはもちろん、スポーツ教室や学校訪問、練習試合の公開など、市民の皆さまが選手と交流できる機会もつくり、本市とNZとの絆をレガシーとして残していきたいと思っています。
特に、教育の分野では、NZの小学校との「オンライン交流」や、中学生や高校生を対象とした留学プログラム「FLY TO NZ PROJECT」、小学生を対象とした校外での英語活動「あつぎキッズガイド育成プロジェクト」などの交流事業を手掛けてきました。
子どもたちの夢と希望を育むことが、本市にとって大きな財産になると思います。これからの国際社会での子どもたちの活躍を願い、引き続き、積極的な交流に取り組んでまいります。
―昨年の選挙の争点の一つとなった中町第2-2地区への市庁舎移転計画。さまざまな計画案が進んでいますが、今後のスケジュールや移転にかける思いをお願いします。
現庁舎の老朽化、狭あい化、分散化などの課題を解決し、災害対応力の強化を図るため、できるだけ早期に庁舎を建て替える必要があります。
庁舎の建設場所の選定に当たっては、【1】敷地の大部分を市が所有している土地であること【2】公共交通機関から徒歩圏内の中心市街地内であること【3】自然災害への適切な措置がとれる場所であることなどを考慮し、「現本庁舎敷地」「中町第2-2地区」の2地区を候補地として、敷地条件や交通利便性などさまざまな両地区の優位性を比較検討してきました。人口減少や超高齢社会といった今後の社会環境の変化も見据え、また、市民の皆さまのご意見も伺いながら、庁舎の建設場所は、中町第2-2地区が総合的に最もふさわしいと判断し、2018年9月に図書館、(仮称)未来館などからなる複合施設として整備する方針を定めた厚木市新庁舎整備基本構想を策定しました。
今後は、複合施設や周辺環境の整備の考え方を示した基本計画に基づき、2025年度の竣工を目指します。現在計画している複合施設は、本市最大の公共施設となります。限られた予算の範囲内で、より良い施設として、効率的で無駄のない運用を実現するため、民間の先進的な知見やノウハウを十分に取り入れながら、設計、施工業務などを進めていきます。
複合施設は、市庁舎だけではなく、図書館や(仮称)未来館などと融合・連携し、利用者が相互に関係し合える場を目指しています。さまざまな世代の方の居場所とすることで、平日・休日を問わず多くの人が利用できる場となり、中心市街地の活性化に寄与できると考えています。
中心市街地のまちづくりは、恒常的に人が訪れる場所にしていくことが大切です。一過性のにぎわいではなく、20年、30年先の未来を見据え、市民の皆さまとともにみんなで育てるまちづくりを進めていきます。
―第9次総合計画「あつぎ元気プラン」も仕上げの年となり次期総合計画の策定も進んでいます。これからの厚木の未来についてお願いします。
次期総合計画の策定に当たり、市民目線によるまちづくりの方向性を議論する「市民検討会議」をはじめ、無作為抽出による市民、子育て世代、次代を担う中高生、大学生のワークショップなどを通じて、さまざまな世代・立場の方からご意見をいただいています。
人口減少・超高齢社会を迎えた中でも、市民の皆さまが住み続けたい、市外の方からも住んでみたいと思われるまちづくりを目指しています。そのために、幼児保育や学童保育の環境整備などの「待機児童ゼロ」はもちろん、看護・介護職人材の確保をはじめとした「地域包括ケア社会」の実現に向けた取り組みを進めていきたいと思っています。これらを支える強い財政基盤の構築・維持のためには、都市基盤整備や企業誘致なども必要な事業です。
2020年度末には本厚木駅南口の再開発事業が完了し、中心市街地がリニューアルされるほか、圏央道の厚木パーキングエリアにはスマートインターチェンジが完成し、道路交通の利便性も高まります。さらに厚木秦野道路が開通すると、将来的には七つのインターチェンジが整備されることになります。
本市は、これらのインターチェンジの整備を見据え、森の里東や酒井地区において新たな産業用地の創出を目指した土地区画整理事業への支援を行っています。将来のまちの発展に欠かせない企業誘致を進めることで、これから厚木市は大きく変わっていきます。ぜひ期待してください。
―セーフコミュニティ(SC)の3度目の認証更新時期となりました。「地域の誰もがいつまでも健康で幸せに暮らせるまち」を目指して行ってきた施策、これからのまちづくりに向けた思いをお願いします。
市長就任時、市内には「事件事故の予防」「体感治安不安感の改善」「コミュニティの絆の再生」といった課題が山積していました。これらの課題解決に向けた検討の中で辿り着いたのが、国際認証のSCです。
2008年から取り組みを開始し市民協働で継続してきた結果、交通事故件数は約55%、刑法犯認知件数は約48%減少し、大きな成果を上げています。
現在では、SCの取り組みにより体感治安も改善し、安心して生活できるまちになってきました。この活動の歩みを止めることなく、今後も市民の皆さまと共に生活しやすい社会環境づくりを一歩一歩地道に進め、国内外のモデルとなるよう取り組んでまいります。
―昨年、台風等による大きな災害も日本各地で発生しました。市の今後の防災に関する取り組みを教えてください。
昨年は、大雨や台風により、河川の氾濫に伴う大規模な浸水や、がけ崩れなどの土砂災害、強風による建物損壊が発生し、全国各地に甚大な被害をもたらしました。
台風19号で城山ダムが緊急放流した際には、相模川の水位が上昇したため、本市では初めて警戒レベル4の避難指示(緊急)を発令、市内47カ所の避難所に5700人を超える方が避難をされました。厚木南地区に完成した雨水貯留施設が機能を発揮したこともあり、幸い市内で大きな被害はありませんでした。
市では、引き続き、いざという時の迅速かつ正確な情報の提供に努め、県内初となる市民協働による地区別防災マップの作成や防災ポケットブックの配布などを通じて、防災・減災対策を強化し、災害に強いまちづくりを進めてまいります。
災害は、いつ起きるか分かりません。市民の皆さまもぜひ、日ごろから避難経路の確認や非常時の持出品を常備していただき、いざという時に備えていただきたいと思います。
―最後に、お正月の思い出と市民へのメッセージをお願いします。
我が家の正月飾りは父から受け継いだもので、小林家オリジナル。父に教わりながらの正月飾りづくりは、年末の恒例行事でした。今も年末に自分で作っています。これがないと新年が迎えられません。
子どもの頃は、お正月になると新しい靴を下ろしてもらえました。ピカピカの靴で仲間と凧揚げやコマ回しをしたのは良い思い出です。新品のものを身に着けると、子ども心に背筋が伸びる思いでした。そして何よりも嬉しかったのはお年玉。もう一度、子どもの頃のワクワクした気持ちを感じてみたいものです。
今年は何と言っても東京オリンピック・パラリンピックの開催年。アスリートたちが世界の頂点を目指して切磋琢磨するように、私も「日本一のまち あつぎ」を目指して走り抜けます!
(了)
※愛川町・小野澤豊町長の新春インタビューは1月10日号、清川村・岩澤吉美村長の新春インタビューは1月17日号の厚木・愛川・清川版に掲載を予定しております。
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