時代劇を披露する劇団「花吹雪」座長 日高正和さん 早川在住 62歳
舞いに滲み出る優しさ
○…着物をまとい、歌舞伎のような化粧をし、重々しく時には弱々しく、台詞を読みあげドラマを披露。演目の終わりには音楽に合わせた舞踊ショーも行う。劇団「花吹雪」に魅せられて早10年。現在は2代目座長として、オリジナルのショーを作り上げる。シナリオ、大道具、ポスターやチケット、会場手配など全て手作り。「演技のあとに花束なんかもらって、プロみたいで気持ちいいんだよ」。優しく目尻に皺が寄る。
○…福岡に生まれ、高校卒業の時、歌手を志し上京した。有名プロダクションに乗り込み「ザ・タイガース」のバンドボーイを務めた。その後は四ツ谷のクラブで専属の前座となり、エルビスプレスリーのコピーもしていた。「芸能人がよく来る店でね、美空ひばりも来てたよ」。付き人になれという芸能人とクラブオーナーが取り合いになるほど期待の若者だった。しかし、そんな数年を経て、録音した自分の歌を聞いて驚いた。「俺の歌は、こんな程度だったのか」
○…今年、愛犬のシーズーを亡くした。過去には10匹以上飼っていたが、ついに最後の一匹がいなくなった。ブリーダーをしていた頃から、子を産めなくなった成犬も大切に育て、タクシードライバーに転職した時も、捨てたり保健所に連れていくなどもってのほかだった。思えば、東京で才能に見切りをつけたあの頃、新宿の小さなペットショップで買ったプードルが始まり。ずっと犬のいる暮らしだった。「犬の死は辛いから、もう飼えないよ」。切ない笑顔をみせた。
○…仕事の無い日は撮り溜めした歌舞伎や舞踊のビデオを見て、振舞いやセットの勉強をしている。「いずれは独自の組織を作れたら」。古典舞踊教室に通い、女性に教えるために女形の踊りも習う。「踊りって性格が出ちゃうから、女形はやっても様にならないけど」。きっと次の公演も、優しさが滲み出る舞踊やドラマを見せてくれるはず。