今から50年以上前、八菅神社の春の例大祭にあわせて叩かれていた「八菅太鼓」。時代の移ろいと共に伝承者が絶え、消えかけていた音色が再び甦ろうとしている。当時の録音テープから楽譜を作り、3月27日に愛川町の旅館「川正」で試し打ちが行われた。
八菅太鼓は、かつて八菅神社を中心に、近隣地域に住む人々が伝えていた。由来や発祥は不明だが、春の例大祭にだけ叩かれ、当時は3月に入ると大人から子どもまで公民館に集まり、毎日練習に励んだという。地域の青年団が中心となり年上から年下へ、口伝や実演で伝え続けていた。
八菅神社氏子総代の千葉義満さんは、20代の頃に八菅太鼓を叩いた一人。「夕方になると集まって、皆での練習は楽しかった。太鼓が足りなくて、囲炉裏の縁を竹棒で叩いたりしたよ」と振り返る。この頃は愛川町も農家が多く、伝承者も農業従事者が多かった。しかし、町が様変わりするなかで農家も減り、青年団がなくなってしまった。伝承者が絶えたことで、八菅太鼓は記憶のなかだけのものとなり、時が過ぎていった。
八菅太鼓復活のきっかけは今年2月、まちづくりネットワーク愛川のメンバーである大野遼さんが、旅館川正社長の足立原等さんから聞いた一言だった。「昔は八菅太鼓っていうのがあった」。その音色を甦らせようと大野さんが各地に働きかけたところ、当時の録音テープが見つかった。愛川高校和太鼓部OBで組織する太鼓ユニット「打縁」の綱島健司さんに協力を依頼し、テープの音から楽譜を再現してもらった。
さらに、大野さんが当時を知る千葉さんに声をかけたところ、千葉さんの知人が八菅太鼓の手書き譜面を持っていたことがわかった。この譜面は、27年前に八菅太鼓を復活させる活動が起きた時に作られたもので、この時は2年ほどで活動が終わってしまった。
試し打ちでは、綱島さんが再現した音色と27年前の譜面に沿った音色を比べ、千葉さんが記憶を頼りにアドバイス。「トントトン」と小気味良い音色が、時を経て現代に甦った。この日はまだ不明点も多かったが、今後も調整を続けていくという。
大野さんは「地域の太鼓団体などにも叩けるようになってもらえは、この先も八菅太鼓が無くならないはず。復活した太鼓を八菅神社の関係者や地域の皆さんに聞いてもらい、将来的には保存会を発足できたら」と話す。
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