横須賀・三浦 社会
公開日:2026.06.26
多文化共生 シリーズ【4】消防団活動に参加 地域の安全守る「担い手」に
神奈川県内に住む外国人数が4年連続で過去最多を更新し、初の30万人台となった。近年、「隣人」としての存在感を増す外国人県民とどう共生するか―。今回は、地域防災の要として安全を守る消防団に焦点をあて、外国籍団員(二重国籍の人などを除く)2人が所属する大和市消防団に取材を行った。
大和市消防団の第4分団で活躍しているネパール出身のケーシ スバスさん(28)は、2017年に来日。日本語学校で1年以上学び、大和市内にある柏木実業専門学校へ進学。簿記などの資格を取得した後、市外の会社で働いている。
アルバイト先での出会い
入団は21年。きっかけは当時、スバスさんがアルバイトをしていたコンビニエンスストアに、第4分団で分団長を務める(当時は副分団長)櫻井正紀さんが、客として訪れたことだった。
「外国籍市民が消防団に参加してくれたら、国籍の垣根を越えた信頼関係を築く力になる」と考えていた櫻井さんは、誠実な人柄のスバスさんを消防団に勧誘した。スバスさんは「ネパールに消防団という組織はなかったと思うけれど、信頼している櫻井さんの誘いだったので、すぐに入団を決めた」と振り返る。
「分団長は父親みたい」
消防団員として活動を始め、今年で5年目。日頃の訓練に加え、自治体の防災訓練などに参加している。今年4月には市の水防訓練として、土嚢の積み作業などを行った。「こうした訓練が地域の安全を守ることにつながると思うので、やりがいがある」とスバスさん。言語や文化の壁については「特に感じなかった」と笑顔を浮かべる。
スバスさんは「櫻井さんは面白くて何でも相談できる、父親みたいな存在。分団は家族のようなもの」と語る。櫻井分団長も「本当に真面目な好青年。母国を離れ、地域のために尽力してくれる姿勢には頭が下がる」と厚い信頼を寄せる。
国籍問わず
大和市消防団は現在、定員250人に対し、団員数は206人。慢性的な団員不足が生じている。大和市消防本部警防課では「外国籍団員を受け入れることで、担い手を少しでも増やすことや、災害時に言葉が分からない市民との『つなぎ役』と期待している」と話している。
※外国籍消防団員については、消火活動の制限など自治体ごとに運営方法が異なります。
双方が心を開き、歩み寄る 「草の根の国際交流」長沢の好事例
地域共生の要諦は、外国人住民の「飛び込む勇気」と「それを受け入れる寛容さ」という互いのオープンマインドの共鳴が不可欠である。
言葉や文化の壁を乗り越えて「草の根の国際交流」を実現している横須賀市長沢地区。YRP(横須賀リサーチパーク)にある日本エア・リキード合同会社で半導体研究員として働くフランス人のイゴール・レプリンスキ氏(30)と妻のノエリー氏(29)は、地域に溶け込みながら日本での生活を満喫している。
日本への赴任が決まり、レプリンスキ夫妻は庭つきの一軒家を住まいに選んだ。そこで目にしたのが、日本特有の地域システムである「回覧板」。自国には存在しないこの仕組みに感動した2人は、スマホの翻訳アプリを片手に、ごみの回収ルールやサークル活動などの地域情報を取得。ある時、その中に「太鼓の叩き手募集」の告知を見つけた。日本文化への興味が先立ち、言葉の壁も恐れず手を挙げた。2週間の猛練習を経て2人は法被や浴衣をまとい、地域の納涼祭の櫓に立つなど、最初の夏を楽しんだ。その熱意は一過性のものではない。妻のノエリー氏は、高齢者が集まるレクリエーションなどにも積極的に参加。交流を広げるため、日本語教室に足繁く通いながら、地域の一員になるための努力を重ねている。
もう一方の受け入れる側に心の壁があれば共生は成立しないが、長沢地区には新参者を拒まない「寛容さ」が風土として根づいている。この地は、戦後の造成で人口が急拡大した歴史を持ち、近隣には神奈川県の障害者施設もあることから、住民は「多様な背景を持つ人や新しい人を拒むことなく受け入れてきた」と山田敏男町内会長は当たり前のそぶりをみせた。
レプリンスキ夫妻と地域の関係を円滑化させているのが、住民である豊島由佳氏の存在。オペラを学びに10年間のフランス留学経験がある豊島氏は異国で暮らす不安を痛いほど理解しており、自身も現地の人々に温かく支えられたという過去があった。その恩返しの思いもあり、母親とともに通訳の枠を超えて2人をサポートしている。カフェに誘ったり、地域のコミュニティをさりげなく紹介したりと、”良き隣人”として寄り添っている。
夫妻は滞在して2年半、8月下旬にノエリー氏は新しい命を出産予定だ。地域の人たちのサポートもあり、異国の地でも不安はないという。今年の納涼祭は「生まれたばかりの赤ちゃんを抱っこしての参加」になるかもしれない。
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