横須賀・三浦 経済
公開日:2026.07.14
海苔養殖の危機と未来 「走水ブランド」守る長塚さん
気候変動による海水温の上昇や魚による食害などを理由に、海苔の養殖が危機に直面している状況を受けて7月2日・3日、全国の海苔漁師らが未来志向で打開策などを論じ合う「海苔サミットin横浜」を横浜市で開いた。2日のパネルディスカッションには、有明海苔で有名な佐賀県、熊本県の海苔漁師に混じり、同イベントの主催県を代表して横須賀市走水で伝統の「走水海苔」を守る次世代の担い手である長塚光(丸良水産)さんが登壇。IT企業から転身して9年目となる長塚さんが現場の切実な危機感を訴えた。
日本の海苔の国内消費量は年間約80億枚と言われている中で、直近(2025〜26年シーズン)の国内生産枚数は約55億枚に留まった。1990年代のピーク時は年間約100億枚を生産していたが、現在はその半分から6割程度に落ち込んでいる状況があり、足りない分を韓国や中国からの輸入で補っていることを流通を担う事業者が伝えた。
生産量の減少は、他の漁場と同様に走水でも顕著だ。走水は、栄養豊富な東京湾を背景とした潮通しの良い生育環境に加え、消費地との近さを味方にして「走水ブランド」を形成しているが、現在の組合員はわずか6軒、県全体でも9軒にまで減少しており、「神奈川で海苔を作っていること自体を知られていない」と長塚さんが吐露するほど認知低下が進む。
担い手不足の影響は、単なる労働力不足にとどまらない。地場産業としての重要性が低下した結果、機械の整備業者すら隣の千葉県から呼ばざるを得ない状況にあり、「地場産業として非常に危険な状態にある」と長塚さんは指摘。昨今の資材高騰もあり、高額な設備投資ができず、生産量がさらに下がるという「負のスパイラル」の渦中にあるとした。
直販強化、裏作も
この窮地を乗り越えるため、長塚さんは前職のIT企業の視点も交えながら、走水海苔の価値を直接届ける「直販強化」や裏作として「海ぶどうの養殖」「太刀魚の延縄」への参入という新たな挑戦に踏み出していることを報告した。進行を務めた大学教授は「海苔養殖という伝統文化を守る小規模漁業の社会的役割は大きい。『無視するには大きすぎる』」と長塚さんらの存在意義を強く肯定した。水産研究者からも大学の研究機関などを活用して、環境に適応した品種改良を行っていく提案などがあった。
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