三崎下町の「昭和レトロ」と称される街並みを構成する看板建築群の顔、いわば看板建築の“看板”的存在である旧松浦洋品店が修復工事を終え、昨年復元した。
看板建築とは、関東大震災後に東京や関東周辺の商店などに用いられた建築様式のこと。おもに木造2階建ての店舗兼住宅で、建物の前面を垂直に立ち上げて、モルタルや銅板、タイルなどを使って洋風デザインの装飾を施した建物を指す。
三崎下町随一の豪華な装飾を誇る、昭和初期竣工とみられる建物。オーナーの松浦さんによると、郷土史研究家で洋品店を営んでいた父・豊さんのデザインで、東京の職人を呼び寄せて建てたとされる。豊さんは美術品や文化財保護に造詣が深く、「仕入れで東京にも行っており、そこでデザインのアイデアを得ていたのでは」と推測する。外壁には当時の銀行建築によく見られた古代神殿を思わせる柱など、数々の装飾が施されている。
経年劣化による雨漏りがひどくなったため、松浦さんは古民家再生など得意とする地元工務店の有限会社クマキ(原町)に修理を依頼。外壁装飾の修復を左官店の有限会社左菊(三崎)が務めた。
「デザインはそのままで」との依頼だったが、状態は腐っていたり部品が欠けていたりと想像以上だった。熊木聡さんは「古いものを後世に継承したいという希望を叶えたかった」と話し、雨漏り修理のほか、木製の雨戸を製作。型板をとってパーツを作り、一つひとつ組み立てた。
左官職人の鈴木一史さんは、丸や三角の異なる100以上の装飾修復を担当。既存の色や質感になるべく近い素材探しに奔走した。「一度壊せば再び建てることはできない。じつは若い頃から、この修理は自分がやりたいと思い続けていたので、話を聞いて嬉しかった」と笑った。
「三崎を訪れる観光客のため、雨宿りのスペースも設けたい」との松浦さんの要望も実現。仕上がりは好評だったという。2人は、「古い建物を守ることは、地元の文化を守り、大工・左官職人の技術向上にもつながる」とし、「これからは若い職人の育成のためにもこうした依頼を受けていけたら」と話した。
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