鎌倉版 掲載号:2019年8月30日号 エリアトップへ

神奈川県美術展「書」部門で大賞を受賞した 生駒 光識(みつのり)(蘭嵩)さん 西御門在住 60歳

掲載号:2019年8月30日号

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「書の可能性、生涯かけ追求」

 ○…真っ赤な背景に金で龍がデザインされた紙。そこに唐の詩人・李商隠が人目を忍んだ情交を詠んだ詩を乗せ、神奈川県美術展「書」部門の大賞を受賞した。「書というと墨一色のイメージが強いが、様々な可能性があることを提示したかった。背景に負けない線の切れ味が表現でき、レベルの高いこの展覧会で評価してもらえたことは素直にうれしい」と微笑む。

 ○…和歌山県出身。母の手ほどきで書道を始めたのは6歳頃。「小学2年生の時の字を今見ても『かな』はほぼ完成している」というから、早熟ぶりが分かる。様々な書道展で入選を重ね、書道学科のある大学で学んだ後、神奈川県の教員となった。現在は「県内でも10人ほど」という書道教諭として茅ヶ崎高校で教鞭をとるかたわら、「蘭嵩」の号で創作活動を続ける。

 ○…「書道とは瞬間の心情や人間性を定着させる芸術。強弱やかすれなど無限の表現がある筆以上に適している道具はありません」。語り始めると、自然と言葉が熱を帯びる。「理想の書を求める過程で培った思考や美意識。それが今の自分を形作っている」と感じるだけに、文字を書く機会そのものが少ない現代の人々に危機感を覚えるという。「自分の手で字を書かないと物事の順序が分からない。言葉について深く考えないからSNSで乱暴な言葉を簡単に発し、困難に当たるとすぐにくじけてしまうのでは」

 ○…妻の実家がある鎌倉に居を構えたのは34歳の時。報国寺の竹林や月明かりに浮かぶ由比ヶ浜海岸など、お気に入りの風景は数多い。「通勤の際、毎朝のように鶴岡八幡宮を通るのですが、そのたびに心が澄んだような感覚になる」。鎌倉の歴史や自然からも啓示を得ながら、エベレストに例える書の高みを一生かけて追求するつもりだ。

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