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公開日:2023.01.01

漁師70年来の悲願「漁港整備」
坂ノ下で構想膨らむ

  • 鎌倉海岸・坂ノ下の砂浜に停泊する漁船。右奥には漁具倉庫(12/20撮影)

    鎌倉海岸・坂ノ下の砂浜に停泊する漁船。右奥には漁具倉庫(12/20撮影)

  • 漁師70年来の悲願「漁港整備」 (写真2)

  • 施設のイメージ(※現時点でのもの)

    施設のイメージ(※現時点でのもの)

  • 漁師70年来の悲願「漁港整備」 (写真4)

 新連載第1回は、鎌倉市が坂ノ下で構想する『漁港整備』について。実はこの件、調べてみると1953(昭和28)年まで遡る。漁業環境改善に向け、漁師たちが鎌倉市議会へ要望を提出。その後、漁港整備も含めた現場からの要望が再三あがる一方で、周囲の理解を得られず見送った時期もあった。漁師たちが「悲願」と口にする施設整備と、漁港のない現状を探った。

 市が2026年度頃着工、2031年前後の完成を目指す漁港整備の始まりは、今から70年前の1953年夏。坂ノ下の漁師たちから鎌倉市議会に宛てて、「坂ノ下防波堤設置に関する請願」が提出された。

 防波堤を設置することで、風や波を避けて船を停泊させる場所ができるからだ。当時の市議会会議録を見ると、防波堤設置の要望に対し「異議なし」と叫んだ市議もいたなど、請願は採択され市長のもとへと渡った。

 しかし、財政事情からその防波堤は事業化されず。後には、坂ノ下や材木座の漁師で構成する鎌倉漁業協同組合が1979年、81年、85年、2009年の4回にわたり(仮称)鎌倉漁港の建設促進に関する陳情を議会へ提出したが、いずれも継続審査に。埋め立てなどの問題への対応が未解決であったことから、市は国の漁港整備計画への登載手続きを見送った。

 それを受け、有識者らを交えて鎌倉漁港対策協議会が3度にわたって設置され、20年以上かけて検討を重ねた。そして2020年、鎌倉市水産業振興計画に「漁業支援施設」という文言が盛り込まれたのを機に、整備への動きが活発化した。

 過去の説明会などで、市民から声のあがった埋め立てによる環境面への影響について市は、「調査やシミュレーションをすでに実施し、今後も継続する」。整備による近隣からの眺望変化に関しても、「必要最小限の規模で周囲に配慮したデザインと設計に」とする。

魚の供給、消費者にも影響

 坂ノ下や材木座に広がる光景は、全国的にも珍しい。砂浜に漁船が並ぶ理由は、腰越、小坪(逗子)のように船を停める漁港がないからだ。

 高校を卒業して鎌倉で漁師となり、現在は「こもも丸」を1人で切り盛りする桑原桃子さん(29)。過去に市議会へ陳情を提出した鎌倉漁業協同組合の中で、最年少の漁師だ。

命の危険と隣合わせ

 12月のある日、桑原さんは午前6時20分頃に材木座の砂浜へ。運転してきた軽トラックを浜の漁船近くに停め、出漁の準備に取りかかる。船着き場のある漁港のように、海上で船のエンジンをかければすぐに出発というわけにはいかない。台車の上に載せた400kgの船を、海に向かって精一杯押す。波打ち際を越えたところでストップ。船の下の台車を引き抜き、砂浜まで持って帰る。そして再び沖へ戻り、船に乗り込んでいざ出漁。

 漁を終えた帰路も、出発時と逆の作業が必要となる。これらには時間と労力がかかるだけでなく、危険も伴う。「波打ち際で船が転覆したり、けがをしたりする人もいる」と桑原さんは言い、「波が高いと命の危険性を感じる」と吐露する。

 さらに、収入面に影響することがある。「沖は穏やかでも波打ち際の波が高いと船が出せず、漁を断念せざるを得ない。20日以上出漁できる月もあれば、10日以下の月もある」と話し、周辺の漁港から出漁している様子を、陸から眺めることしかできない日もある。

 「自分で戦略を立てて魚が獲れるのが好き」と漁師の魅力を語る桑原さんは、「体が動く限り続けていきたいので、安全な船の置き場がほしい」。漁師歴40年以上の鎌倉漁業協同組合の木村和俊組合長(59)も、「今は本当に危ない仕事をしていると思う。施設整備は長年の悲願なんです」と言葉に力が入る。

場所は海浜公園海側

 整備地に定めたのは、国道134号線のカーブに沿った鎌倉海浜公園坂ノ下地区の海側だ。市は新設する名称を「漁業支援施設」とし、環境に配慮して必要最小限の計画にしていくという。

 漁業支援施設には、坂ノ下や材木座の漁船のほか、浜に点在する漁師の漁具倉庫も集約。過去には、倉庫が台風によって崩壊したり、破片が周辺に飛散したりしたこともあったためだ。

 施設整備により、漁師の働きやすい環境を整えることで消費者へ安定した魚の供給、漁師の担い手確保も視野に入れる。また、朝市や体験型イベントを実施するなどして、にぎわいや学びの拠点にしたい考えだ。

国の補助金視野に

 事業費は、15〜20億円を想定。市は、国や県とも連携し「全額市の負担ではなく、半分は国庫補助金で賄えるよう調整中。その他の補助についても使えるものを検討している」と説明する。

 漁業支援施設の整備には今後、調査や設計に加え、条例手続き、埋め立て申請なども必要となる。2026年度頃に工事着手、31年前後の完成を目指し、坂ノ下での構想がこれから具体化していく。

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