学芸員のイチ推し! -連載 Vol.32-「千人針」に込めた想い
千人針とは、日露戦争のころに始まり、一枚の布に千人の女性が一針ずつ刺して糸玉を作り、武運と無事を祈って出征兵士に送ったもので、特に日中戦争以後、大流行しました。
写真上の千人針の腹巻に描かれた虎は故事「虎は千里を行って千里還る」にあやかったモチーフで、寅年生まれの女性に限りその年の数だけ縫ってよいとされていました。縫い付けられた5銭と10銭は「死線(4銭)を超え苦戦(9銭)をまぬがれる」という語呂合わせです。
写真下の千人針の腹巻には寒川神社の朱印と国のために尽くすという意味の「義勇奉公」の文字を確認することができます。「武運長久」という文字の千人針は布で覆われているため、見ることができませんが、これは結び目が肌に当たらないように、また糸に虫がつくことを避けるための工夫でした。戦局が進むにつれ、日露戦争などの寒冷地では想定されなかった虫がつくようになり、このような工夫がされるようになりました。
街頭に立って協力を依頼する出征兵士の母や妻の姿は、日本全国で見られました。銃後に残された女性の想い、気持ちの発露が感じられます。この資料は、戦後80年企画展「戦中・戦後のくらし」(6月29日(日)まで)でご覧いただけます。
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