富士見小学校5年生の鈴木陽麿くんが、小田原市石橋で縄文時代の土器を発見し、小田原市の学芸員・土屋健作さん(37)と共著で論文を発表した。論文は1月31日発行の「小田原市郷土文化館研究報告」(小田原市郷土文化館)に掲載された。
今回発見した土器は、石橋の佐奈田霊社周辺で2018年9月に陽麿くんが採集した。これは市内で出土する1万年以上前の、最古の土器の一群だが、これまで天神山丘陵(南町周辺)以南では見つかっておらず、石橋で早期の生活痕跡があったことを確認できた意義は大きい。
陽麿くんは、小学2年の時に担任の教師から土器を拾える場所を教えてもらったことをきっかけに、父親と市内の遺跡に足を運ぶようになった。かもめ図書館で行われていた企画展で”縄文先生”と慕う土屋さんと出会い、土器を見つけては鑑定を依頼。文様や内容物などで歴史を見極める技を学んだ。そんな中の一つに「珍しい土器がある」と土屋さんが気付き、「詳しく調べてみる価値がある」と陽麿くんをサポートする形で調査が始まった。
これまで石橋で採集した縄文土器100点、石器3点、剥片30点の中から、36点を選び出し、断面実測と拓本、破片実測を行って、分類。文様や胎土の特徴を観察したところ、その中の一つが土屋さんが睨んだ通り、1万年以上前の縄文時代早期前半の土器であることが判明した。また、陽麿くんの鋭い観察眼で、文様のつけ方から多くの土器が右利きの人によって作られていたことも分かった。
発見から1年以上をかけて完成させた論文には、陽麿くんの手書きの原稿も掲載されている。市郷土文化館によると「小学生による論文掲載は初。貴重な資料となる」と話している。土屋さんは「大人顔負けの知識と熱心さ。これからが楽しみ」と期待を込める。陽麿くんは「初めて使う道具や調べ方は難しかったが、土器は知れば知るほど、面白い。夢は考古学者」と現在も新しい調査に向けて、市内の遺跡を巡っている。
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