戦前から戦後にかけて、人々の娯楽は芝居や映画を見ることだったという。南足柄市文化会館が今年から始めた日活映画の上映会「ワンコインシアター」が好評で、高齢者を中心ににぎわいをみせている。
南足柄市の「足柄劇場」、松田町の「金時座」、山北町の「山北劇場」と「山北中央劇場」―。この名を聞き、懐かしさを感じる人も多いのではないだろうか。時代の流れと共に、惜しまれつつ消えていった憩いの場のひとつだ。
南足柄市の映画館第1号は「娯楽館」。昭和の初めごろ、現在のさがみ信用金庫関本支店付近に建てられた。芝居や講演などもあり、文化ホールのような存在だったという。戦争の激化とともに閉鎖された。
戦後まもなくすると、「足柄劇場」が開かれた。当時はテレビもなく、映画は娯楽の王様だった。現在、劇場があったビル内に店舗を構える呉地一清さん(79)は「小学1年生位のときによく親と行った。『時計屋の息子、また来たのか』なんて言われた」と当時を懐かしむ。旧娯楽館そばに住む男性(86)も、チャンバラ映画を観に行ったという。
松田駅そばにある仲町商店街は、かつて「金時座通り」と呼ばれていた。金時座を経営していたのは高橋利光さん(81)。1946年(昭和21)年、戦時中に倉庫として使っていた芝居小屋を株主20人で買い取り、父が映画館を始めた。65年頃までは日活、大映などの邦画だけでなく芝居もあった。
中学2年から映写機を回していた高橋さん。昭和30年代半ばにあとを継いだ。「この頃は日活映画が大人気。石原裕次郎ら銀幕スターが出演する作品は、多い時で1200人くらい入った。『観られなくても良いから入れてくれ』って言われたこともあったな」と懐かしむ。
テレビが普及し始めると、次第に客足が減っていった。1978年、『八高田山』の上映を最後に金時座の幕を下ろした。
山北では自主上映も
山北町では、映画館だけでなく、大学生を中心に自主上映会も行われていた。
1951年に、山北映画鑑賞会(木川保雄会長)が発足した。青果市場や川村小学校講堂などで上映を行い、7年間でのべ1万5千人あまりの観客を動員した。
今は、映画を見るためには小田原市や海老名市などまで足を運ばなければならない。そこで南足柄市文化会館の指定管理者、アクティオ株式会社が今年5月、「往年のスターが出演する名作を、スクリーンで楽しんで欲しい」と、日活映画を毎月ワンコイン(500円)で観られるイベントを企画した。
初回の『嵐を呼ぶ男』(石原裕次郎・北原三枝)、2回目の『伊豆の踊子』(吉永小百合・高橋英樹)の動員数はそれぞれ100人以上と好評。観客のほとんどが年配者だった。
次回は7月21日(木)に『狂った果実』が上映される。
※参考資料/南足柄市制施行10周年記念要覧(南足柄市)、足柄乃文化(山北町地方史研究会)
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