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公開日:2024.10.05

山北町露木さん
米寿で「夢」の二人展
自作人形と亡夫の絵画で

  • 自身の和紙人形と亡夫の油絵を持つ露木さん

 山北町の人形作家・露木盛枝さん(88)による作品展「感謝の二人展〜亡き夫と私の和紙人形」が10月17日(木)まで町立生涯学習センターで開かれている。米寿を一つの節目に、その喜びとこれまで歩んで来られた感謝の思いを込め企画した、夫が遺した油絵との久々の合同展示。「夢でした」と感慨深げだ。

 「生涯できる趣味を」と考え、65歳頃に始めた和紙人形。人形は割り箸や粘土を胴体の軸にして、それに和紙を着せるように重ねて作る。

 山北町のまつりや伝統芸能などが自身の代表的なモチーフ。これを場面で表現し、独特の世界を作るのが露木流。1体1体に配役があり、1つのテーマに登場する人形は20〜30体に及ぶ。制作は主役クラスで数日かかりだが、「無心になれる時間で、とても幸せなの」と話す。これまで制作した人形は合計4500点を超えるという。

 今回の展示は、およそ150点。歳を重ねる中で、よく思い出すようになったのは「囲炉裏を囲んで昔話を聞かせてくれたおばあちゃんや、母が縁側で聞かせてくれた昔話」だといい、それらを表現した作品を選んだ。

 一緒に会場を彩るのは、亡き夫・康雄さんが描いた油絵15点だ。かつて創作活動の励みにもなっていた夫婦の二人展。自身の節目にもう一度やることにした。普段は自宅の2階に飾ってある夫の作品を大事そうに抱えながら「米寿の二人展は私の夢だったんですよ」と遠くを見つめる。

作品通し再会も

 「露生まれ 木々にひかりを頂ただいて 盛りしげり行く 枝だ々に感謝」 ――。米寿を迎えた日に遊びで作ったという短歌には、自身を支えてくれた周囲への感謝がにじむ。長年、保育園などに務めた露木さん。町内には、すっかり大人になった教え子たちがいっぱいだ。「作品展などで顔を合わすと、今後は私が気にかけてもらったりしてね。今回も出会えるかしら」とにこやか。

老いを忘れて

 園の先生らしく、思いを歌や絵に表現して分かりやすく届けるのが得意だ。部屋にも絵手紙や書がたくさん飾られている。取材の最後、うさぎとかめの童謡に乗せて口ずさんだのは「老いを忘れて これからは 苦しみ喜び楽しんで 趣味の炎が絶えぬよう 楽しい楽しい人生を」――。

 人形を通して人とのつながりが維持できる面もあるといい、それが作品づくりの原動力ともなってきた。作り続ける意欲に衰えは見えない。

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