中外製薬(株)が、日立製作所跡地に建設する「中外ライフサイエンスパーク横浜」。これまで2カ所に分割していた研究所を一つにする、同社唯一の国内研究拠点となる。現在の工事の進捗状況や地域貢献について、同施設のトップ、飯倉仁研究本部長に話を聞いた。
――現在の工事の進捗状況を教えてください。
「コロナで一時工事を縮小したため少し遅れていますが、進捗は約70%程度。現在は外装工事がほぼ完了し、内装および設備工事を中心に進められています。2022年10月竣工、23年4月稼働予定です」
――新施設での従業員数は。
「約1000人となりますが、創薬に力を入れるため、将来的に人数が増えることを見込んでいます」
あらゆる新薬が世界へ
――具体的な業務内容を教えてください。
「多くは新薬創りです。がん、リウマチなどの免疫領域、または血友病のように希少疾患に至るまで幅広い創薬を行います。価値がある医薬品であればどのような疾患に対してもアプローチし、今までにできなかったことができる技術を開発し、これまで創り出せなかった医薬品を創ることを目指しています。戸塚区から価値の高い医薬品を世界の方々に届けたいと切に願っています。
このほか、初期の臨床研究を行っていくだけではなく、新薬候補物質を実際の医薬品として生産するための、技術研究も実施していく予定です」
――一部市民団体から水害が心配という声があります。
「この点は我々も最も心配してきたことの1つです。地域の皆様にご迷惑をおかけしないよう横浜市の指導を受けながら建物設計を行いました。具体的には水害時のシミュレーション、横浜市と環境アセスメントでの審査を経て、東西両敷地にそれぞれ約6000トンの雨水流出抑制槽を設置しました。敷地内に降った雨水を直接公共下水道に流入しないようにすることで負荷を軽減するなど、最大限の努力を行っているところです」
通勤方法は電車が主
――新施設に、経済効果などさまざまな期待をする声があります。
「いうまでもなく企業は社会のために存在していて、地域との適切な関係構築・調和が必須です。建物のデザインもなるべく長大にならず地域に溶け込むデザインを採用しました。また、地域の皆様にご活用いただける2つの公園の設置なども進めています。
通勤は原則公共交通機関を利用します。研究者にとっては顔を合わせて議論をする場が非常に重要で、いわゆる”飲み会”などといったコミュニケ―ションも大切にしています。現在はコロナ禍で難しいですが、会食ができるようになった際には、地元のおいしいお店で、電車によって帰りの足を気にせずに飲み会が開催できることを、私自身もすごく楽しみにしています。今回の建設でこの地がより一層魅力ある空間となり、より多くの方々が集まる場として活用いただき、戸塚の方々と絆を強くしていければと思っています」
バイオラボで科学教育も
――地域貢献に積極的ですが、取り組みについて教えてください。
「具体的なものとしては、▽近隣の皆様が自由に散策してくつろげる緑道の提供(薬に関連する樹木や草花を植栽する計画)▽科学教育を通じた地域社会とのコミュニケーション(エントランス棟の中につくるバイオラボで子どもたちに科学に触れる機会と場を提供し、理解や親しみを持ってもらう)▽新設するグラウンドでは、ラグビー、サッカー、テニスなどができ、地域の方にも利用できるよう現在運用を検討中――です。
そのほか、研究所を維持するために委託する業務(研究サポート、食堂、清掃、緑化など)に関しては、近隣の方々に働いていただけるよう取り組んでいます」
抗体カクテル療法を提供
――中外製薬が提供するコロナ治療に役立つという抗体カクテル療法が話題です。どういう効果があるものですか?
「通常、1つの医薬品には1種類の抗体が含まれていますが、弊社が提供するものは抗体が2種類あります。それぞれの抗体が新型コロナのタンパクの別々の場所で結合するのが特徴で、さまざまな変異株に対しても効果が維持できる可能性が高まっています。臨床試験では、重症化率が約70%少なくなったという結果も出ています」
――最後に区民へのメッセージを。
「弊社は真に社会の役に立てる企業となることを目指し、新薬創出活動と共に地域の皆様との良好な関係構築に全力を挙げて取り組みます。一歩一歩着実に前進することができる会社であると私自身信じているので、至らぬ点があればご指摘いただければと思います」
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