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高津区版 公開:2014年12月12日 エリアトップへ

高津物語 連載第八七二回 「樋口一葉の許嫁―渋谷三郎 その二」

公開:2014年12月12日

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 樋口一葉の婚約者であった渋谷(後改名して坂本)三郎は、明治維新前は神奈川県であった北多摩郡原町田村の武蔵屋の当主―渋谷徳次郎の次男であった。

 血統の上では真下晩松の孫にあたるという。

 三郎の兄、渋谷仙二郎は、早く明治十五年に自由民権運動の同志を集め、政治結社「融貫社」を作った。

 そして事務所は自宅におき、北多摩郡民権運動の中心的存在になって居た。

 明治十五年七月には弟の三郎と共に自由党に入党している。同志である石坂公歴も細野黄喜代四郎も、この融貫社の幹事であった。

 だから、渋谷家とは親密な間柄にあった。一葉の婚約者、渋谷三郎は南多摩自由党の連絡委員をつとめていた。(色川大吉著作集第一巻『新編明治精神史』筑摩書房)

 一葉の文学と関係深いのは二十二才の時の下谷区龍泉寺町(大音時前)と、二十三才の時の、本郷区丸山福山町の住居で、渋谷ではない。一葉の日記では、間口二間、奥行六間ばかりの長屋で、造作はないが店は六畳で、五畳と三畳の座敷があり、向きは南と北、左隣は酒屋、井戸は良い水だが深く、庭有り、隣家に木立ち多く藪蚊の唸る所、家賃は三円の敷金、月一円五十銭。

 下谷から吉原通いの一筋道で、夕方からとどろく車の音。飛びちがう灯火の光は、筆舌に尽くし難く、行く車は午前一時迄絶えず、帰りの車は午前三時から響き始めるという。

 樋口一葉はここで、「糊口的文学の道をかえて、浮世を十露盤の玉の汗に商いと云う事」を始めるべく、荒物屋を開業、売上二十銭の第一日から次第に六十銭から一円に迄伸びている。

 此処で書かれた作品は僅かで、見るべきものがない。が注目されるのは、一葉は此処大音寺前町の住居で、実見し、観察し、体験した事柄の内容である。吉原を中心として匂い渡る、独特にして精細な風物と男女の心情の機微を、活きた目で見事に看破し、小説「やみ夜」「たけくらべ」「大つごもり」「軒もる月」「ゆく雲」「うつせみ」「にごりえ」「十三夜」「分かれ道」「この子」等の作品となった。
 

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