重点医療機関として新型コロナの陽性患者を受け入れる、宿河原の川崎市立多摩病院(長島梧郎病院長)。本紙では、感染拡大の第3波で負担が増大した同院の現場を前号で紹介した。今回は、看護部長と医療安全管理室の看護師の視点から課題に迫る。(12月11日取材)
感染拡大防止に努め、外部とのパイプ役として奔走するのは、医療安全管理室の感染管理認定看護師・アニン祥子さん。陽性者数を行政に届け出たり、各所からの寄贈品を管理して供給するなど、活動範囲は幅広い。
今春以降、医療用具等が不足する中で寄せられた物資は、事務方と調整しながら適正なものを最前線に届けられるよう尽くしてきた。「コロナ病棟の仕切り方や使う食器、清掃方法は何が適切かなど現場と話し合い、何度も行き来しながらやってきた」。ときに衝突しつつ、「病院全体、『オール多摩』でやっていかなきゃいけない。患者のためという方向性は一緒だと信じている」
第1波で最初に物資が不足したとき、地域からの思いを肌で感じた出来事もあった。「近所のケーキ店から『うちの店閉めるから、マスク使って』と、6箱くらいもらって。それ以来、多摩病院を絶対に壊しちゃいけない、ずっと続けられるよう頑張らなきゃと思っている」
人員配置に苦心
副院長で看護部長の佐藤美子さんは、人員配置を複雑な思いで担う。10月末の院内クラスターのときは、看護師だけで51人を2週間休ませた。「地域の方々のためにと看護師を配置しているが、コロナ患者の病棟もそれ以外もみんな大変な思いをしている」。一般病棟でも、整形外科を担当していた看護師が、急きょ循環器や腎臓など分野の異なる患者を担当するケースもあるという。「コロナ患者の対応も、後方支援もどちらも過酷。検査を増やすべきという声もあるが、PCR検査の検査技師は腱鞘炎(けんしょうえん)になるほどの件数をこなしている。このままだと病院自体が大変なことになると感じている」
当初、数万円だったPCR検査が安価になり、「気軽に受けられる」と言われるようになった今、佐藤さんは検査の精度に警鐘を鳴らす。「仮に陰性でも明日は分からない。安心して動き回っていたら、どこかで感染していることに気づかないかもしれない。年が明けて急に患者が増えたとしても、当院で受け入れられなくなったときに、どうすればいいのか悩んでいる」。地域のために、できることは――。それぞれの立場で、責務を全うし続ける。
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