町田市立博物館より㉓ 食べることも調査のひとつ 学芸員 佐久間かおる
町田市立博物館では、久しぶりの民俗資料の企画展示「昔話の道具―むかしむかしにあったとさ―」展を開催しています(2月12日(日)まで)。民俗資料に関心をもっていただくために、よく知られた昔話やことわざをテーマに、当館所蔵の民俗資料を紹介する展覧会です。
町田の民話
さて、展覧会の中では町田市に伝わる民話を紹介しており、その中で「こうせん婆さん」という話を取り上げています。この話は大麦を煎って臼で挽いた粉「こうせん」を売っているお婆さんが、好物の「こうせん」を食べたところ喉に詰まって死んでしまい、それを村人たちが供養のために石碑「こうせん塚」を建て、咳の神様として祀ったというお話です。
今回の展覧会では、町田市南大谷にある天神社入口にあったこうせん塚(当館蔵)を展示していますが、展示をするにあたり、上司から「こうせん」とはどんなものか?という質問をぶつけられました。
「こうせん」とは
「こうせん」は漢字で「香煎」と書き、一般的に「麦こがし」「はったい粉」などと呼ばれている粉状のもの、またはその粉を原料としたお菓子を指します。以前「こうせん」を原料にした麦落雁というお菓子を食べたことがあり、固形の食べ物だと認識していましたが、来館された様々な方にお話しを伺うと、自宅で挽いたものを食べたり、駄菓子屋でストローとともに売られていて粉のまま食べたりと、おやつとして食べたという話を多く聞きました。
どんな味
あらためて「こうせん」とはどんな物なのかを調べるため、「こうせん」を購入し、お茶を片手にいざ実食!です。口の中に入れると麦の香ばしさはあるけれども味は無いに等しく、口の中の水分が全て取られて咳き込んでしまいました。他の食べ方として、砂糖を加えお湯で溶いて食べてみたり、きな粉餅のように餅にまぶして食べてみたりと、様々な食べ方を試してみましたが、どの食べ方も高齢の方にとっては喉に詰まる恐れのあるものだったと想像できます。こうせん婆さんもついつい食べすぎて喉に詰まってしまったのでしょう。
「こうせん」に興味をお持ちになった方は、注意してお召し上がり下さい。
今回の展覧会では羽(は)釜(がま)や徳利(とっくり)、お椀など食に関する民俗資料も展示しておりますので、徳利にはどんな味のお酒が入っていたのかなど想像を膨らませながら見学されるのもオススメです。この機会にぜひ市立博物館へご来館ください。
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