宮司の徒然 其の137町田天満宮 宮司 池田泉
軍曹
不快害虫。人間本位のなんて嫌な括りだろう。代表的なのはゴキブリ、ムカデ、ゲジゲジ。そしてクモ全般。中でも軍曹と呼ばれるアシダカグモは、足を拡げると掌ほどにもなる夜行性のクモ。巣を作らず単独で徘徊し、虫を待ち伏せして捕食する。見た目は確かに危なそうだが、実は噛むような歯はなく、毒針も持っていないから、人に対しては無害。しかも臆病。わりと人間に好かれているカブトムシやクワガタの方が、持ち方を間違えるとケガをする。
さらにアシダカグモに注目すべきは、ゴキブリや毛虫も捕食してくれる益虫だということ。
もっとも、ゴキブリも足にばい菌を付けて運ぶから無害とも言えないが、人に噛みついたり刺したりするわけではなく、やはり彼らも不快害虫というだけで様々な殺虫剤を世に誕生させ、薬剤メーカーを成長させてきた。
虫の悲運
私は虫に対して不快感を抱くことが少ない方なので、ゴキブリはおどかしてタンスの隙間に追いやるか、手でやさしく捕獲して外へ逃がすようにしている。逃がす時には必ず声をかける。「もう入ってくるなよ」とか「次は違う生き物に生まれ変われよ」とか。
ゴキブリとして地球上に生まれただけで嫌われる悲運。たいてい人間に見つかれば、容赦なく殺虫剤で追い回されるのだから。極論だが、もしも私がゴキブリに生まれ変わると分かっているのなら、せめて人間がいない時代に生まれたいと願うだろう。
不快?
人が自由・平等を謳うのは人間だけのため。見た目だけで差別したり判別するのは人間の本質的な部分かもしれない。
トンボやチョウは遠目に見れば大丈夫な人たちも、虫の顔をアップで見るのは不快という人がほとんどではないだろうか。緑繁る美しい山並みも、その中に分け入れば、動物や虫たちがうごめく生命の森。人は自分の立ち位置や目線で、好いたり嫌ったり、癒されたり恐れたり。
愛称
天井に張り付いている軍曹に「ご苦労様」と声をかける。益虫だと知る地方の人が、尊敬の意味で名付けたとされる「軍曹」という愛称。捕食するのはムカデやカメムシ、ハエや蚊だけにしないか。ゴキブリはさして悪者じゃないから。
おまけ白花
増えすぎて困っているツルニチニチソウに白花が登場した。
空気のせいか、土壌汚染か、暑さのせいか。これも変異。すっかりマイナスイメージな言葉になっちゃった「変異」だけど、変異に変異を重ねて今の我々がいることを忘れてはならない。
そして、未だに外見や性質の違いで差別したり、同族で殺し合ったり。未完成な人類の変異は続いている。
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宮司の徒然 其の137町田天満宮 宮司 池田泉12月21日 |
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