町田天満宮 宮司 池田泉 宮司の徒然 其の144
天命
今年の氏子参拝旅行は戸隠神社と諏訪大社四社巡拝だった。梅雨間近の6月初旬、戸隠は高原の涼しい風が渡り、あちこちに卯の花
(ヤマウツギ)が咲いていた。中社参拝の後、奥社参道を随神門まで歩いたが、まっすぐな山道は両脇に細い小川があり、湿地ならではのミズ(ウワバミソウ、写真左下)がみずみずしい葉を茂らせる。ヒメカンアオイ(写真右下)やエンレイソウに紛れて、タツナミソウやムラサキケマンに似た花が目立った。
帰宅してから調べてみたところ、ラショウモンカズラ(右上)だと分かった。珍しい名前だ。平安京や平城京の正門「羅城門」が、平家物語の謡曲で羅生門とされ、四天王の渡辺綱が鬼を退治する話で有名だ。ところが、ラショウモンカズラの名は、その謡曲の中で渡辺綱が斬り落とした鬼女の腕に似ているから付けられたらしい。なんてことだ。私が最も嫌う勝手な命名。草木自身は知ったことではないが、いくら人間本位といっても、愛のかけらも感じられない。
他にも、ヘクソカズラはただ臭いから、ハキダメギクは掃き溜めに生えてたから(牧野博士が命名)、オオイヌノフグリは犬の陰嚢に似てるから、等々。愛ある国際命名会議とか必要ではないか。いや、もうそれどころではないのか。
人間は既にしっぺ返しをくらい始めている。人類発展の歴史は地球上の動植物を排除してきた。便利を求め過ぎて自分たちの首を絞めている。温暖化が進み、猛暑酷暑、ハリケーン、洪水、干ばつ。共存に立ち返らないと、多少不便でも地味な営みに戻さないと、人間は地球上で一番弱い生物になるかもしれない。
後に腕を落とされた鬼は謡曲「茨木」で報復が描かれている。鬼もやられっぱなしではない。ましてや、人間にやさしかった地球が怒ったらどうなることやら。天命ならば仕方がないが、まだやりようはあるはず。ただし、現在の人類は一斉に協力できるほど仲良しではない。方々で独裁者という鬼が暴れている。
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宮司の徒然 其の142町田天満宮 宮司 池田泉5月16日 |
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