石原延啓展覧会
アートと伝承の融合
ＶＲ技術駆使した新表現

「ｄｅｅｒｍａｎ」を手にする延啓さん（左）とＶＲを担当した越中さん

　上町にある私設ギャラリー「ヨコスカアートセンター」をメイン会場にして逗子市出身の美術家、石原延啓（のぶひろ）氏の作品展「横須賀異界巡り─ｄｅｅｒｍａｎ祀りごと─」が開かれている。地域の歴史と風土に根差した伝統行事の伝承をテーマにしたもので、ＶＲ技術を用いたアートパフォーマンスで新しい可能性を提示する。期間は12月25日（日）まで。

　延啓さんは、作家で元東京都知事の石原慎太郎さんの四男。今年２月に父が亡くなり、その後を追うように母の典子さんも３月に他界した。母方の祖父と祖母が横須賀出身であり、自身のルーツを整理する中で「大切な人の魂を送る」という儀式の全人類共通の普遍性に思いが至り、作品として表現することにした。

　延啓さんが創りだした「鹿男─ｄｅｅｒｍａｎ─」のキャラクターを使ってペインティング、ドローイング、インスタレーションを行うアートパフォーマンスを映像化。「仮想現実」と称されるＶＲ技術で現実と異界を描き出すことで、鑑賞者は新しい儀式としての祀りごとに参列しているような臨場感を味わえるという。

　「父が生前に関心を寄せていた走水の弟橘媛命の伝説、日中戦争で戦死した祖父の石田少尉と祖母、両親である作家Ｉと妻の３組のカップルの物語に触れる構造。ｄｅｅｒｍａｎを登場させて能楽の要素も取り入れ、異界へと転じた人たちと邂逅する表現を試みた」と延啓さんは説明。実際に市内各所を歩いて取材を行ったという。

　ＶＲ制作を担当した越中正人さんは、今回のＶＲアートパフォーマンスを通じて伝承手段の可能性を探るとしている。

　展示は同センターのほかに、上町深田町内会館、大津諏訪神社の３拠点で展開。入場料や関連イベントなどはＨＰ（【URL】https://www.yokosuka-ac.jp/）に詳細情報。