横須賀・三浦 スポーツトップニュース
公開日:2025.11.07
加藤姉妹
二人で立つ世界の舞台
バスケでデフリンピックへ
聴覚に障がいのある人の国際的なスポーツ大会「第25回夏季デフリンピック競技大会東京2025」が11月15日に開幕する。この大会のバスケットボール競技に、関東学院大学2年の加藤志希さん・志野さん姉妹(横須賀市鴨居在住)が日本代表として出場する。
生まれつき聴覚に障がいがある双子の加藤姉妹。聴力に差はあるが、補聴器を装着すればある程度の会話が可能な二人とバスケットボールの出会いは、小学校に入学して間もなくのこと。バスケ経験者の両親らの影響もあって地域のミニバスケットボールチームで競技をはじめ、鴨居中、横須賀大津高、そろって進学した関東学院大でもプレーしている。
高校では県大会で8強入りを果たす原動力となったほか、22年にはデフバスケ女子日本代表のトライアウトを通過。強化選手として、国内トップレベルの環境で経験を積んできた。
長年の悲願だったデフリンピック出場について、姉の志希さんは「楽しみから緊張に変わってきたが、このためにバスケをやってきた」、妹の志野さんは「大学の友人に、『応援に行くから絶対に勝って』と言われているので頑張りたい」と意気込みを話す。
独自サインで意思疎通
補聴器により聴力の障がいを軽減させ、懸命な努力と仲間のサポートもあって健聴者のチームでバスケ人生を歩んできた二人。志希さんが「パスをもらうために声を出すよう指導されてきた」と言えば、志野さんも「大学では試合中でもお互いのプレーについてアドバイスを積極的に伝え合っている」と語るなど、ともに「バスケは声のスポーツ」であることを実感してきた。
しかし、デフバスケでは補聴器などの装着が禁じられており、選手の聴力も「少し聞こえる」「まったく聞こえない」など個人差がある。
声による意思疎通が難しいなか、これを克服するために日本代表チームが取り入れているのは、視覚的にコミュニケーションを図る「サインバスケット」。「リバウンド」を示す手話など、瞬時に意思を伝える視覚的なサインをチームで独自に考案して共有し、世界の頂点を目指す。
広めたいデフスポーツ
趣味はともに動画の視聴だが、好みは「昔流行したドラマ」という志希さんに対し、「ドラえもんの映画」という志野さん。「全然分かり合えない」と笑うが、バスケについてはプレー技術や練習に対する姿勢など、互いに尊敬しあう間柄だ。
デフバスケを始め、周囲から期待や励ましの声が多く届くようなったことに「誰かに応援してもらうという新しい世界が広がったことが嬉しい」と志希さん。志野さんは、「子どもの頃、健聴者と一緒に行動するのが難しいこともあった。でも、デフスポーツは平等な環境でプレーできるし、私自身もっと早く知りたかったという思いがある」と話す。世界の舞台に立ち、デフの子どもにデフスポーツの存在を広めることも二人の大きな目標だ。
横須賀市にゆかりのある選手として、ライフル射撃に桂玲子さん((株)ハイテクノ)、陸上に猿樂彩香さん(横須賀市立ろう学校)も出場する。
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