逗子の景観まちづくり瓦版 第三十九号
いつもの散歩道鎌田 菜文
春になると歩くのが楽しみな散歩コースがあります。なんということのない近所の住宅地なのですが、それぞれのお宅の庭に咲く花が素晴らしいのです。ゆるくカーブした道に沿って、梅にはじまり、桃、ユキヤナギ、数種類の桜と、春のあいだじゅう楽しみが続きます。花のあとは新芽がいっせいに吹き、初夏の緑も素晴らしいものです。ときどき足をとめて木々の美しさに見とれるのですが、お家の方に不審がられないようにほどほどにしてまた歩き出します。季節ごとに目を楽しませてくれる木々やお庭を提供してくださることに感謝しながら歩きます。
ゆるいカーブをぬけると田越川が見えてきます。川は日によっても時間によっても水の量や流れ方がまったく違います。6歳の娘と散歩をするときには必ず川沿いのどこかで立ち止まって、「今日は水が多いね」、「あそこに魚がいるよ」と、その日その時の川を見つめます。鷺が魚を捕らえる瞬間に遭遇して歓声をあげることもあります。いつも違った表情を見せてくれるので娘もわたしも飽きるということがありません。田越川もまた海に向かってゆるくカーブしていて、このカーブが街の風景をやさしくまろやかにしていると感じます。逗子に暮らすようになって十年近くたちます。身近に川のある街に住むのは逗子がはじめてなのですが、四季だけでなく、朝の光、夕暮れなど一日のうちに移り変わる風景が身近にあって幸せを感じます。
瓦版第39号平成27年
5月18日発行より転載
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