逗子・葉山 社会
公開日:2026.06.26
逗子の私設科学館「理科ハウス」 2027年5月閉館へ ミュージアムの”閉じ方”探る大実験始動
逗子市池子の私設科学館「理科ハウス」が2027年5月16日をもって19年の歴史に幕を下ろす。開館記念日の5月16日に同館が発表したもので、運営者の高齢化が主な理由。これに先立って、同館のこれまでの歩みを未来へ繋ぐための「閉館プロジェクト」を始動。前向きな節目としてのラストイヤーを歩み始めている。
「世界一小さな科学館」を掲げる同館は2008年に開館。天文や物理、生物など理科全般に触れて学べるユニークな展示を、森裕美子館長(70)と学芸員の山浦安曇さんが二人三脚で企画・運営してきた。
子どもたちへの科学分野の教育や啓発活動が評価され、14年には「小柴昌俊科学教育賞優秀賞」、18年には科学技術に関する報道や展示などで優れた成果をあげた個人を表彰する「科学ジャーナリスト賞特別賞」を受賞している。
当初は10年間の運営を目標にスタートした同館だったが、「ここまで続けられたのは、来館者や地域の方々のおかげ」と森館長はしみじみと振り返る。
同館では、来館者に森館長や山浦さんが付き添って実験や解説を行うスタイルを取っている。「お節介でしょ」と森館長は頬を緩ませながら冗談交じりに話すが、このコミュニケーションから展示のアイデアを得ることも多かったという。例えば、様々な物体の構成元素を学ぶ元素周期表の体験展示は、10数年前に同館を訪れた小学生の提案から生まれたもので、現在もなお残る人気のコンテンツだ。
このように、利用者と双方向で育くまれてきた空間とあってか、発表直後には、大切な「居場所」を惜しむリピーターから「あと10年はできる」と愛のある“お怒りの声”が上がったというほど、利用者の心に深く根差していた。
”ひっそり幕引き”にNO
今回立ち上げたプロジェクトは、全国でひっそりと幕を閉じていくミュージアムの実態を調査している(一社)路上博物館の齋藤和輝理事との出会いがきっかけだった。多くの博物館や美術館などのミュージアムが、閉館のプロセスや所蔵品の行方を公にしないまま消えていく現状がある。そこで、その時に至るまでの過程をオープンにする場を作ろうと企画された。
今後1年間をかけて、利用者らとワークショップを重ね、ただ悲しいだけで終わらせず、閉館時には何をすべきかなどの具体策を探る。合わせて、全国の都道府県と20の政令指定都市の教育委員会へのアンケート調査も実施し、「ミュージアムを閉じる時、何が起こるのか」を明らかにする手がかりとしていくという。
科学館としての看板は下ろすものの、建物は現地に残される。館内には、森館長の祖父であり、アインシュタインの来日時に通訳も務めた物理学者、故・石原純の貴重な著書や資料などが多数保管されており、一部の図書とともに今後も残していく方針だ。
「終わり方は私たちだけでなく、皆さんと一緒に考えていきたい。そして最後は『閉館してよかった』と思ってもらえる1年にしていけたら」と森館長は話している。
プロジェクトに向けたクラウドファンディングは6月30日(火)まで実施している。
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