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公開日:2026.10.30

クロマツプロジェクト 湘南の風景を「飲む」  市の木ビール完成、地域資源保全へ

  • 松ビールを片手にクロマツの可能性について熱弁をふるう岡部さん

    松ビールを片手にクロマツの可能性について熱弁をふるう岡部さん

 市の木で湘南の原風景を象徴するクロマツを未来へ紡いでいこうと、市民団体「クロマツプロジェクト」が先ごろ、「松ビール」と銘打ったクラフトビールを開発した。横須賀市浦賀の醸造所「ホワイトドッグ」とタッグを組み、クロマツの新芽を使ったオリジナリティーあふれる一杯。23日の夜には、藤沢駅北口の飲食店「甘味とごはんや 八一」で関係者向けのお披露目会が開かれ、約30人がグラスに注がれた「湘南の風景」を味わった。

 湘南のクロマツは江戸期の浮世絵にも描かれ、潮風や飛砂から人々の暮らしを守る存在として生活を支えた。しかし近年の都市開発やライフスタイルの変化に伴い、かつて一面に広がっていた松林は激減した。

 ランドスケープデザイナーとして国内外の景観や庭園設計を手がける岡部真久さんが6年ほど前から、プロジェクトの代表を務める。お披露目式で岡部さんは、生まれ育った辻堂地区の古写真を見せながら、「昔、実家周辺は豊かな松林に囲まれていたが、わずか半世紀足らずで大半が姿を消した。このまま何もしなければ、私たちの子や孫の代には完全に風景が途絶えてしまう」と警鐘を鳴らした。

食のアプローチ

 掲げる理念は「人が暮らすほど自然環境が豊かになる循環」。家庭で松の苗木を育てて街へ植え戻す「クロマツの里親」制度や、松林を景観に取り入れた住宅開発など「土」に着目した活動を進める中で、もう一つの柱として位置づけるのが「食」のアプローチだ。

 「不動産や景観保護は関わる人が限られるが、食は誰もが日常的に口にする。美味しく食べ、飲む体験を通じて『松を切ってはいけない、価値がある』と感じてもらいたい」と岡部さんはビール造りの狙いを明かす。

新芽の香り

 プロジェクトメンバーは昨秋、藤沢駅北口で開かれたイベントに参加。隣で出店していたホワイトドッグ代表の小野崎圭さんと偶然出会い、「松でビールが造れるか」と相談を持ちかけた。その後、岡部さんが小野崎さんに新芽を送り、交流がスタート。柑橘系の香りがする新芽に合わせ、ホップも辻堂や平塚市で栽培された白ブドウや桃に似た香りの種類を手に取った。トロピカルフレーバーに、ほど良い苦みと濁りが特徴のスタイル「Hazy IPA」に仕上げた小野崎さんは「深みのある味わい。バランスが取れ、松のニュアンスを引き出せた」と手応えを語る。

 会場では松ビールのほか、松の料理が振る舞われ、集まった参加者は松の可能性を語り合った。最後に岡部さんは「5年後、10年後には『松を食べに湘南へ行こう』と言われるような、新しい食文化として根付かせたい」と展望を語った。

 松ビールは今後、お披露目会の会場となった同店で販売を検討しているという。

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