仲通り商店街から路地を一本入ると見えてくる名店センタービル。古くから飲食店がひしめくこの建物で、1973年から営業を続けているのが「酒の店 秋田屋」だ。店を切り盛りするのは小林登志子さん(77)。かつての大船の賑わいを知る数少ない1人でもある。
寅さんも虜に
現在、鎌倉芸術館や鎌倉女子大学、ショッピングセンターが立ち並ぶ一帯に1936年、開設された松竹大船撮影所。小津安二郎監督、木下惠介監督、大島渚監督らが作品を撮り続け、特にそのスタイルから小津作品は「大船調」とも呼ばれた。山田洋次監督・渥美清コンビによる「男はつらいよシリーズ」が撮影されたことでも知られる。
小林さんが店を開いた当時は撮影所のほか国鉄の寮などがあり、街は活気にあふれていたという。「大東橋辺りには屋台がいくつも並んで賑わっていた。道が舗装されておらず、高いビルもなかったけど、今より人が多かった」と話す。
秋田屋の入るビルの3階にはかつて高級キャバレー「パルコ」があり、当時の映画スターら著名人が来店していたという。「山田洋次さんや寅さん、坂本九さんがよく来てくれてね。いつも午後6時くらいだったから、うちで一杯飲んで上に行っていたんでしょう」。店の名物であるきりたんぽや山菜料理のほか、「山田さんは特にかぼちゃの煮物が好きだった」と懐かしそうに振り返る。
店には今も小林さんの人柄や料理を求めて常連客が絶えない。10年以上通い続けているという男性は「なによりほっとする場所」とその魅力を語る。
かつての映画スターや名監督たちも、忙しい撮影の合間を縫って一息ついていたのだろう。小林さんは「体力が続く限り、店を続けるつもり」と笑顔で語った。
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