二宮町のラディアンホールで昨年12月に開かれた一色音楽教室ピアノ・リトミック発表会で、牧島瑠嘉君(6)とピアニストの長井充さん(84)による連弾が披露される一幕があった。師弟でも親戚でもない、半世紀以上も年の離れた2人が対面したのは、この日が2回目。そこには偶然の出会いから始まった心温まるストーリーがあった。
謎の老紳士
2018年の夏休み、瑠嘉君は母・友香理さんとららぽーと湘南平塚の楽器店を訪れた。友香理さんが楽譜を選んでいる間、展示されている電子ピアノで発表会に向けて練習中のモーツァルトのソナタ第15番を弾いていたところ、向かい側からCDのように完璧で表現豊かな同じ曲の演奏が聞こえてきた。目を上げると優しそうな老紳士が立っていて「難しい曲を弾いているんだね」と微笑み、友香理さんが挨拶をすると老紳士は「ピアニストの長井充」と名乗り、瑠嘉君が練習中のもう一曲を弾いてみせて去って行ったという。
牧島家では動画投稿サイトやCDで長井さんの演奏を聴くようになり、この話を聞いた音楽教室と仲間が手を尽くして長井さんとコンタクトを取る方法を探し出し、発表会での再会が企画された。
音楽がつないだ縁
日頃の練習にも力が入っていたという瑠嘉君は、発表会当日に見事な演奏を披露。客席から見守っていた長井夫妻から笑顔がこぼれた。ステージに招かれた長井さんは瑠嘉君と出会いのきっかけとなったソナタを連弾し、ソロで「キラキラ星」の変奏曲も披露して客席から盛大な拍手を受けた。「まさか、こんなことになるとは思わなかった。皆さん集中してたくさん練習をして上達してほしい」と長井さん。瑠嘉君は「緊張したけれど、うれしかった。(長井先生の演奏は)本当にすごくてキレイ。自分も毎日練習して、大好きなサーフィンと一緒にサーファーピアニストになりたい」と話した。友香理さんは「音楽に人をつなげる不思議な力を感じた。今回を自信につなげて、これからも音楽を楽しく頑張って」と瑠嘉君へエールを送る。
長井さんは大阪府出身。音楽一族に育ち、3歳からピアノを始めた。音大で30年以上教鞭を執った後、修道院で伝道生活を送るなど数奇な人生を歩んだ。現在は平塚に居を構え、演奏活動やCDの発表をしている。
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