大磯町を主なロケ地として制作した映画『ある殺人、落葉のころに』が、10月2日(金)からイオンシネマ茅ヶ崎で先行上映される。主人公の青年たちが生まれ育った町の設定で、海と山がある大磯のたたずまいや東海道線の地下道「ゆめのちかみち」などが映る。
2015年に公開されたオール茅ヶ崎ロケの初監督作品『3泊4日、5時の鐘』で男女の恋愛模様を描き、ロッテルダム映画祭で高い評価を得た三澤拓哉監督(32)=藤沢市=が脚本も書いた。湘南を舞台にした長編第二作の本作では、恩師の死をきっかけに露呈する若者たちの苦悩と孤独を、大胆なミステリーに仕立てた。
主人公は幼なじみの4人の青年。土建業で働き、気ままな生活を送る彼らだったが、季節の移ろいの中で友情が崩れていく。ラストはある悲劇でクライマックスを迎え、謎を残す形で幕を下ろす。
撮影は17年12月、大磯町内を中心に茅ヶ崎市と藤沢市などで行われた。2年の編集期間を経て、昨年9月に完成。アジア最大級の映画祭である釜山国際映画祭をはじめ、国内外七つの映画祭に招待された。今年3月の第15回大阪アジアン映画祭では、インディ・フォーラム部門の最高賞にあたるジャパン・カッツ・アワードを受賞した。
社会問題映す
釜山国際映画祭では「いつ爆発するかわからない地表のようだ」と評された。三澤監督自身も「見どころは全編を通して流れる不穏な空気。小さな町で起こる出来事を通して、社会批評を内包するような作品を作りたかった」と話す。経済的な格差や負の感情、ムラ社会のしがらみなど若者や家族が抱える問題を取り上げたという。
キャストには『3泊4日、5時の鐘』にも出演した中崎敏さん、テレビドラマや映画で活躍する森優作さん、永嶋柊吾さん、モデルの守屋光治さんら注目の若手俳優が起用された。また、自主映画では珍しく、香港の新進気鋭のスタッフ、キャストと共同制作。香港で6月に一般公開された。
地元店舗など登場
ロケ地に大磯町を選んだのは、共同プロデューサーで、昭和の映画監督・小津安二郎が定宿にした「茅ヶ崎館」の館主を務める森浩章さんの提案。町内をめぐり、作品の構想が浮かんだという三澤監督は「歴史ある町並みや小道が魅力的で、少し色気のある男たちを歩かせたいと思った」と動機を語る。「急勾配の坂道で重い機材を持って撮影するのは大変だったが、画に力を与えてくれる大磯で撮影してよかった。地元の方々にも支えてもらった」。町観光協会と漁業協同組合、飲食店のはやし亭、主人公らのたまり場である土建会社の倉庫の撮影に町内の事業所などが協力した。
9月24日に三澤監督が大磯町の中崎久雄町長を表敬訪問した。三澤監督は「ふとした瞬間に変わってしまう人間関係をテーマに、メジャーな作品を手掛けていきたい」と抱負を語った。
製作委員会では来年の全国公開を目指し、クラウドファンディングを実施している。支援金のリターンには町内の井上蒲鉾店の詰め合わせなどを用意する。詳細は【URL】https://motion-gallery.net/projects/oisofilmへ。
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