「逗子葉山駅前寄席」実行委員会の代表を務める 渡邊 貞雄さん 逗子市小坪在住 83歳
感謝の心を持って
○…「どーだい、逗子で本物の落語を見ることはできねーかな。俺も婆さんも落語が大好きでよ」「少し遠いけど浅草とか上野まで行ってみたら」「そんな銭はねーだよ。脚代、木戸銭、孫への土産、2万両はかかる」。きっかけは一人のお年寄りとのそんな会話だった。地元の高齢者に落語を楽しんでもらおうと7年前からスタートした「逗子葉山駅前寄席」。発足以降、プロの噺家を招いて自治会館や福祉施設などで年に3〜4回寄席を開いてきた。「準備は大変だけどね、来る人の笑顔があるから続けられる」
○…テーマは「手頃な値段で本格的な落語を」。通常木戸銭は3千円程度だが「年金暮らしのお年寄りもたくさんいる。できるだけ安く」と18人の世話人で経費を可能な限り切り詰めた。小道具は中古のものを修理し、照明や音響、受付も全て手作り。当初は近所の人が数人集まる程度だったが、わずか千円という手頃さで来場者数は開催ごとに増え、今ではチケットが早々に完売してしまうことも度々。「戦前戦後の日本を支えてきたのは高齢者の人たち。駅前落語にはその人たちへの『ご苦労様でした』という気持ちを込めているんだよ」と微笑む。
○…54年続く老舗時計メーカー「誠時」の取締役会長。一代で年商5億円を越える企業にまで育て上げた。自宅にはアンティークの時計や蓄音機がずらり。今も研究を怠らない。また一線を退いた今では地域の小中学校で時計の歴史や仕組みなどを講義する“先生”の顔も。「毎回子どもたちが喜んでくれる。頼まれるうちは続けるよ」
○…会の存続のために3月にNPO法人の申請を出す予定。また4月の寄席では25回の節目を記念して後期高齢者をはじめ500人を無料で招待する。「色んな人の協力あってこそできる。今後も感謝の気持ちを忘れずに続けていきたい」。皆の力でできた駅前寄席。また次もお年寄りの笑顔と笑い声が会場に花開く。
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