緑区 人物風土記
公開日:2023.05.04
緑ほのぼの荘での「あたまの体操」講座で講師を務める
中村 眞一さん
霧が丘在住 74歳
脳トレで届け、自信と喜び
○…「数学は『数(すう)楽(がく)』。答えにたどり着こうと手順を組み立てることに喜びがある」。論理的思考を要するパズルやクイズが解けたときの感動。そうした喜びを高齢者が味わえる機会を創出しようと月2回、区内で開かれる「脳トレ」を中心とした講座で講師を務めている。正解を導き出し「自分はまだできるんだ」と自尊感情を高めること。それが生き生きとした人生を送る上で大切だという。「小さな自信が、次の課題に進む大きな自信につながるので」
○…横浜市中区生まれ。幼少期、実家が経営する自転車販売・修繕の店舗の力になればと、そろばん教室へ。みるみるうちに計算が速くなり、次第に小学校で「ほかの子が解けない問題を自分は解けた」経験が増えた。自信が付いた上、担任に「将来先生になると良い」と言われたことも背中を押し、大学卒業後、数学教師として市内の中学の教壇に立った。
○…30代のころ、手を焼かされた生徒が卒業式の日に「先生、ありがとう」と握手を求めてきた。「泣かせるじゃないか」。教師冥利に尽きる思いだった。母校である市立吉田中学校の校長も務めた後、定年退職。その後は神奈川大学で10年半にわたり、数学科教育法などを教えた。もちろん、長年の経験から味わった教職の苦労や喜びも伝えながら。
○…先輩の勧めで、高齢者向け講座での講師を始め、最近は脳トレの教材づくりが趣味になっている。受講者が正解にたどり着くには、どのような教え方が良いかを考える日々。「教師としての職業病だね」と笑う。高齢者にとって「孤独の先にあるのは認知症。そうなる前に、いかに自信を持ってもらえるかが大事」。あたまの体操を楽しむ時間が、その一助になればと願っている。
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