相模川ふれあい科学館アクアリウムさがみはら(坂野浩一館長)は10月28日、環境エンリッチメント(飼育動物の幸福な暮らしを実現させる具体的な方策)に取り組む動物園や水族館を応援する「エンリッチメント大賞」(市民ZOOネットワーク主催)のグッドアイデア賞を受賞した。
展示個体にも繁殖機会を
同館が受賞した取り組み内容は「ミヤコタナゴの人工産卵床の開発および展示水槽への設置」。県内では横浜市の権田池で確認されたのを最後に自然水域から絶滅した、天然記念物のミヤコタナゴ。繁殖時には二枚貝を産卵床として利用し、貝の中で卵を成長させる生態をもつ。人工繁殖技術はあるが、自然産卵のためには、多くが絶滅危惧種の二枚貝を採取し続ける必要があり、人工授精では個体に負担がかかるという問題があった。
同館が開発した人工産卵床は、二枚貝の入水管や出水管(ミヤコタナゴが貝の中に産卵・放精する部分)の構造や機能を安価なプラスチック容器とシリコンチューブで再現したもの。容器に小さな貝を入れ貝の匂いでミヤコタナゴの縄張り行動や産卵・放精などを誘発し、繁殖に成功させた。さらに装置を展示用水槽に使用することで、展示個体にも繁殖の機会を与えられるようになったという。審査員からは「貝を消耗させず自然な繁殖行動を引き出し、繁殖のための環境要素をエンリッチメントによって補った素晴らしいアイデア」と称された。
装置を開発した展示飼育部の波多野順さんは、「日本の淡水魚での取り組みが評価されたことは誇っていいと思う。今後、色々なところに広がっていけばうれしい」と話した。同館では今後もこの受賞を糧に生き物たちが本来の姿を見せてくれるよう努め、更なる挑戦を続けていく。
同賞には今年、全国から28通の応募があり5件が各賞を受賞している。
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