徒然想 連載325 花のお寺 常泉寺 住職・青蔭文雄
今月は、譬(たと)えば、綸釣(つり)のとき、魚強く縄(いと)弱ければ、争いて牽(ひ)くべからず。担だ鉤餌(えさ)を口に入れしめて、其の遠近(おんごん)に随い、沈浮(ちんぷ)に任縦(まか)せて、久しく収穫せざるがごとしです。
出典は、中国、隋、天台智顗(てんだいちぎ)説『魔訶止観(まかしかん)』。
意は、釣りをするとき、魚が強く牽く時は争って糸を引いてはいけない。餌を口に入れさせたままにして、魚が泳ぐのに合わせて、自由にさせながらゆっくりと捕獲するにかぎる、ということです。
この文言は、仏が一般の人々の救化するときに心がける対機説法(たいきせっぽう)の神髄を譬えたものです。相手の様子をしっかり見て、時と場所と状況を考えて、相手に合った対応でなければならない、と諭しています。
諺に「急いては事を仕損じる」とありますが、仕事でも、仕上げの段階に入った時こそ、全体を見直し、最後まで気を抜かずに、尚一層の注意深さと集中力を持つことが大切です。
桃蹊庵主 合掌
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