連載 路線バスっておもしろい! 第12回 われは車長(しゃちょう)なり 路線バス運転士 坂井昭彦
会社には社長、学校には校長、お店には店長がいるように、バスにはバス長、つまり車長がいるのです。
今の路線バスは、ほとんどがワンマン(一人)で運行していますから車長は運転士自身となります。普段は運転士として乗務していますが有事(地震や事故)の際、運転士は車長として行動しなければなりません。
2011年3月11日、東日本大震災が発生した時、私は綾瀬で路線バスに乗務していました。最初地震があった時、走行中ハンドルがとられた(左右に揺れた)ためバスのタイヤがパンクしたのかと思いバスを路肩に止めたところバスがゆさゆさ揺れたので驚きました。
と、その時30人程のお客様がご乗車されていたのですが、一人の女性のお客様が悲鳴をあげたのです。すかさず社内のマイクで「地震が発生しております。バスは安全な所に停車しておりますので大丈夫です」とアナウンスを入れたところ、バス前方左手にある民家のブロック塀がガラガラと崩れ落ちたのです。
再び女性客が「キャー!」と叫んだので「地震はおさまりましたので大丈夫です」とアナウンスを入れました。
もしこの時、運転士が落ち着いて行動できなかったら、お客様が座席から立ち上がったりして車内人身事故が起きていたかもしれません。
すみやかにバスを止め、アナウンスをすることの大切さ、そして何より大事なことは運転士が落ち着いて行動することだと思います。だって運転士は車長ですからね。でも本当は私自身、地震の時、心の中で少しパニックになっていました。
車長は、お客様に不安を与えないためにも、こういった時に落ち着いて行動しなければなりません。車長であるバスの運転士には必要なことだと私は思っております。
だからみなさんも有事の際は、パニックになって勝手に動かず落ち着いてバスの運転士の指示に従ってくださいね。よろしくお願いいたします。
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