プロスポーツの世界、第一線で活躍できる選手はひと握り。その中で、プロサッカーの平均引退年齢は、数あるスポーツの中で極端に短く26歳程度と言われる。競技一筋で生活してきた選手にとって、「次の人生」の選択とタイミングはとても難しい。昨年12月に現役を引退し、この春から小学校高学年を対象としたサッカースクールを立ち上げる谷口博之さん(34)。自身の「セカンドキャリア」をどのように描いていたのだろうか。
2004年、川崎フロンターレに入団し、プロサッカー選手のキャリアをスタートさせた谷口さん。J1リーグ戦通算で350試合に出場。ここ数年は、怪我をした左ひざのリハビリを続けながら復帰を目指していたが昨年12月、サガン鳥栖を最後に、16年の選手生活に別れを告げた。
現役を退いた後、どう生きるか―。「20歳くらいから、漠然とスクールをやろうと決めていた」と振り返る。
高学年での「出会い」
サッカーボールを蹴り始めたのは小学校1年生の頃。鴨居SCに所属し「きっかけは覚えていなくて、気付けば練習に没頭していた」というサッカー少年は高学年になると、「選手になる」と早々と目標を定めていた。「その時代の出会いが原点」と谷口さん。自分に真剣に向き合って話を聞いてくれた小原台小の先生、鴨居SCで父のように指導してくれたコーチ。「身体も心も大きく成長する高学年の頃、信頼できる大人に出会えた。プロでの経験を通して、今のこの世代に”自分に自信をつけること”を教えたい」。新たに開くサッカースクールで5・6年生を対象にしているのは、そんな理由からだ。
その思いをさらに強くしたのは、フロンターレ時代に経験した異業種のインターンだ。赴いた先は元日本代表監督、二宮寛さんが営んでいる葉山の珈琲ショップ。そこで教えられたのは「人を大切にすること」。日本サッカー界の黎明期を支え、引退後はビジネスマンとして海外に赴任していた二宮さんの言葉が、今でも重く響いている。
人として成長できる場
スクール名は、「PAPPA NINO(パッパニーニョ/お父さんと少年という意味)」。インターン以降も親交を深める”師匠”の二宮さんから、珈琲ショップと同じものを名付けてもらった。「サッカーだけでなく、人として成長できる場にしたい」と考える。
現役引退後もサガン鳥栖との縁は続いており、今季からチームのスカウトを担当している。大学などに赴き、プロとして活躍できる人材を探す。「技術はもちろんだが、自分を活かす”武器”のある選手が生き残っていくと思う」。グラウンド上で、その判断力が鍛えられていくのも高学年ごろから。「選手の育成という面でも、大きく伸びる可能性のある年齢。良い形で引き上げていければ」と意義を語る。
自分にできる「恩返し」
「地元でスクールを」という思いに賛同し、横須賀サッカー協会なども手助け。市内企業のウスイホーム(株)も支援に協力する。「大好きなサッカーを通して感謝の気持ちを伝えていきたい」。スクール経営者としてのセカンドキャリアは始まったばかり。名刺交換や資料作成など「慣れないことも多く、学びの日々。責任も感じているが、楽しみのほうが大きい」と語る。
子どもたちは皆、プロを目指すわけではない。それでもサッカーを通して、人生を豊かにしてほしい。仲間や恩師との出会いで、もっとサッカーが好きになった。次は自分の番。「誰かのきっかけになればいいな、と思っています」
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