横須賀・三浦 社会
公開日:2026.03.27
三浦市初声町 山田さん
巨艦築いた手、爪楊枝に宿る
城郭や建造物、再現作品を展示
三浦市初声町在住の山田清一郎さん(86)が手がけた「爪楊枝細工」19点が実相寺(同町)の本堂で展示されている。モチーフとなっているのは、主に国内の城郭や神社仏閣。緻密に再現された作品の数々が参拝客の目を釘付けにしている。
爪楊枝細工は、爪楊枝を数千、数万本と接着し、建造物などを再現する工芸。素材の細さを生かした緻密な表現が可能で、木の温もりと工芸品のような重厚な質感をあわせ持つのが特徴だ。
山田さんは、中学卒業後すぐに漁船に乗り、北の海で網を引いた。1971年頃、家族のために陸へ上がってからは造船の世界へ。浦賀ドックで巨大な船のブロックを吊り上げる100トンものクレーンを操縦した。一歩間違えれば大事故に繋がる現場で、数トン単位の重量物をミリ単位の誤差もなく据え付ける日々。巨大な鉄の塊を空中で制御したその測量感覚が、今、わずか直径2mm、長さ6cmの爪楊枝を扱う指先に宿っている。
孫への愛 創作の源泉
爪楊枝細工との出合いは約20年前。テレビで見かけ、定年後の知力維持にと始めたのがきっかけだった。最初の一歩は、3人の孫へ贈った手作りの鉛筆立て。「おじいちゃん、使うよ!」という孫たちの無邪気な喜びが、山田さんの創作意欲に火をつけた。以来、1日4時間を制作に充て、これまでに約40点の作品を築き上げてきた。
制作スタイルは自己流。資料が乏しい場合でも、かつて訪れた場所の記憶や家族が撮影した写真、さらにはご当地土産のパッケージに描かれたイラストなどから設計図を引く。より忠実に再現するために爪楊枝を半分に切ったり、鋭く尖った先端をあえて表面に出すことで、茅葺き屋根の質感を再現したりするなど、妥協は一切ない。傘寿を越えてなお、半生で醸成された職人気質は少しも錆びつくことはないようだ。
創作活動の傍ら、山田さんが何より大切にしていることがある。それは、共に歩んできた妻への敬意。「家の用事を先に済ませる。草むしりでも買い物でも、頼まれたことは全部こなしてから、自分の作業に入るんだ」。家庭の役割は疎かにしない。「互いに助け合うのが流儀」と笑う山田さんの表情には、職人の厳しさとは別の、温かな慈愛がにじむ。
執念の9400本
自信作は、2018年に約7カ月を投じて完成させた「姫路城」。使用した爪楊枝は9400本にのぼる。「何よりも建物全体のバランスを調整するのに骨が折れた」と振り返る。これまでで最大の規模を誇るのは「館山城」=右写真。高さ55cm、横60cm、奥行き45cmというスケールが見る者を圧倒している。作品のモチーフは国内の神社仏閣、東京スカイツリー=左写真=、白川郷といった名所に留まらず、韓国の城など海外の建造物にも及ぶ。
完成した作品は惜しげもなく人に譲ることも多いという。爪楊枝細工のほか、20年程続く同寺の「寺子屋」では、子どもたちに手作りの玩具を贈るなど、地域交流も欠かさない。「自己満足だけど、誰かが喜んでくれるのが一番かな」
展示は5月半ばまで。
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