横須賀・三浦 人物風土記
公開日:2026.07.17
カスヤの森現代美術館で公開制作を含めた展覧会を開いている 会田 誠さん 横須賀市汐入町在住 60歳
完成なき大作、描くは「共存」
○…国内外で物議を醸す作品を発表し、社会に「表現の自由」を鋭く突き付け続けてきた異端児が、2年以上前から温めていた構想を具現化した大作『混浴図』3点の公開制作に挑んでいる。描くのは歴史上の偉人や政治家、ロボットや動物までが同じ湯に浸かるカオスな世界。「社長もはみ出し者も、三島由紀夫も人ではない者も、全裸になればみな平等」。誰もが混ざり合って生きていく「究極の共存」を表現する。
○…四肢のない少女を描き大論争を巻き起こした『犬』など、過去の衝撃作に話を向けると、「批判を浴びるような仕事は全体の1割程度」と淡々と語る。「美しい」と感じるか、「不快」「不謹慎」と激怒するか、観る人の心の揺らぎやリアクションをあぶり出す鏡として機能するのが美術作品の本質的な価値というのが持論。世間が抱く過激なイメージとは裏腹に、語り口はどこまでも自然体だ。
○…首都圏の各地を転々としてきたが、還暦の節目に選んだのが横須賀。汐入の山の上に住まいを構え、大津にアトリエを開いた。汐入の家は「足を鍛えるために階段だらけの過酷な環境をあえて選んだ」と笑い、「ヴェルニー公園を見下ろす緑豊かな坂の上の別世界」と満足げな表情を浮かべた。
○…美術館で描き進めている巨大な混浴露天温泉の『混浴図』は「会期中には完成しない」ことを公言している。締め切りに追われる商業デザイナーとは異なり、誰の注文でもない純粋な表現だからこそ、時間に縛られる必要はない。すでにシリーズ4点目のキャンバスも用意。作品を生み出すプロセスそのものを提示する。世間の喧騒を軽やかにかわし、新しい土地で目の前のキャンバスに愚直に向き合う。
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