本紙では新年の幕開けにあたり、平井竜一逗子市長に単独インタビューを行った。昨年始動した家庭系ごみの有料化や逗子海水浴場の活性化への取り組み、市民の関心事となった逗子マリーナの高層ホテル建設構想について聞いたほか、新年の抱負を語ってもらった。
(聞き手=本紙編集長・佐藤弦也)
総合計画・池子の森自然公園・逗子海水浴場・ごみ有料化―
―まずは昨年1年を振り返って。どんな年でしたか。
「様々なことが新たなスタートを切った年でした。池子の森自然公園の開園のほか、逗子海水浴場の活性化では市民協働の様々な取り組みが話題を呼びました。家庭ごみ処理の有料化が10月に始まり、新たな総合計画も始動しています。一昨年の市制施行60周年という節目をスタートに、色々なことが動き始めた1年だったように思います」
―池子の森自然公園については3月中旬から緑地エリアもオープンします。公園全体で整備の進捗は。
「運動エリアについては年度内に野球場のフェンスを整備し、その後硬式も利用できるようになります。緑地エリアについては当面は土曜・日曜と祝日の限定開園という形ですが、緑地を活用したイベントや交流事業も徐々に増えていくでしょう。また、基本計画で位置づけられている文化財収蔵展示施設や青少年の野外活動施設の整備については現在、防衛省や米軍と調整しています。まだ具体的に示せる段階ではありませんが、今後用途や整備に向けた財源など検討を進めていきます」
―緑地エリアが一般開放される一方、環境保全への懸念もあります。対応は。
「すでに環境調査が終わっており、緑地エリアを保全しながらどう活用するかは今後の大きな課題です。エリア内の貴重な動植物に影響を与えないよう、配慮しなくてはなりません。オープンにあたっては、市民ボランティアの方と一緒にエリア内を見回る体制づくりを進めています。まずは曜日を限定した開園でどのような運用が適切か。開放日を増やすか如何についても拙速にやらず、時間をかけてやっていくことが必要だと考えています」
―逗子海水浴場について。昨年、海の家の営業時間が試行的に延長されるなど、活性化に向けた模索が始まりました。
「安心安全を維持しながらより多くの人に楽しんでもらえる取り組みが始まり、良い方向に向かっていると感じています。活性化策では、昨年開催された市民企画のスプラッシュウォーターパークは大変素晴らしかった。観光協会が企画した子ども向けイベントや10月に開催された光の波のプロジェクトも盛況でした。今シーズンは平日を含めて、どこまで『ファミリービーチ』に相応しいイベントが増えていくかが、集客の鍵になるかもしれません。逗子海岸営業協同組合とも同じ方向を向いて努力することができていますので、課題を解決しながらより良い方向に向かっていくのではないかと思います」
―マナーアップ警備員による注意件数の増加など、来場者のモラルを問題視する声もあります。
「現状、お酒については『浜では飲めない』ということを徹底して発信し、来場者のモラルやマナーに訴えていくしかありません。罰則導入という意見もありますが、浜には外国の方も多く、実現にはハードルが高い。浜辺での飲酒禁止は昨夏、鎌倉でも始まり、逗子を含む湘南エリアが『マナーを守って遊ぶ場所』という機運が高まっています。時間がかかっても、地道にそういう海を目指すことが重要だと思っています」
―今シーズンの規制の方針については。
「現在、運営に関する運営検討会に議論を重ねていただいていますので、最終報告や市民皆さんの声を受けて2月には方針を固めたいと考えています」
―家庭ごみ処理の有料化による効果と課題についてはいかがでしょう。
「ごみの減量化については導入した昨年10月だけで燃やすごみの収集量が前年同月比4割減となるなど開始早々から効果がありました。一方で分別が細分化されましたので、今後はその周知徹底と、いわゆる違反ごみをなくしていくことが課題です。特に違反が目立つステーションについて、排出者が特定できれば個別に直接ルール順守を呼びかける取り組みを始めています。地道ではありますが、今後改善の効果が期待できるのではないかと思います」
―ごみ減量化に向けては商工会と連携した生ごみ処理機「キエーロ」の普及にも取り組んでいます。
「昨年は有料化と商工会の努力の甲斐あって、およそ300台が新たに普及したと聞いています。今後はこれをさらに広げていきたい。将来的には、市内で1万世帯に普及すればという理想を描いています」
―市長自身もキエーロの愛用者です。PRを。
「適正に使えば臭いや虫の問題もありません。重さで言えばごみの量が半分ほどになるでしょうか。うちは5人家族なのですが、週2日出すごみ袋は10リットル1枚で済んでいます。2人家族なら5リットルで十分。ぜひ試していただきたい」
「行政・市民・業者の議論必要」
逗子マリーナホテル建設構想で
―五輪を見据え、リビエラグループが描く高層ホテル建設構想が市民の高い関心を集めました。昨年12月議会では大規模開発に反対する陳情や決議も採択されています。改めて市長のお考えを聞かせてください。
「セーリング競技の開催計画が出てきておらず、現時点で市として何が適正か申し上げることができないのが実情です。ただ、件の開発計画について、『環境や景観に配慮すべきではないか、議論すべきではないか』という声については当然受け止めなければいけません。五輪を成功させたいという思いは皆が共有しているわけですから、開催計画が具体化した段階で逗子として、特にマリーナを持つ小坪エリアとして、どういう体制が成功への道筋か、行政はもちろん、市民、事業者が同じテーブルについて議論するべきだと思います」
―事業者側に組織委から内示があったとして、条例緩和や特例措置を求められた場合、どう対応しますか。
「市には条例があり、また、都市計画法などの法令にのっとって行動することが求められます。条例の基準を超えるためには都市計画手続きが必要であり、住民合意が大前提です。事業者から要望があったとしても、まずは地域との合意形成ができるか協議をしていただかなければなりません」
―地域活性と五輪開催をどう関連づけますか。またホテル建設構想については。
「長期的には人口減や高齢化の中でどう地域を活性化させるかは逗子が直面する大きな課題です。とくに小坪地域の活性化は総合計画の重点事業にも位置づけています。五輪開催はその好機であり、見逃す手はありません。むしろ何もせずとも人は来る。混乱を招かないためにも市としての対応は必要です。ホテル構想については、130m超の建物はすでに反対という意見が出ているわけですから、それを踏まえて景観と環境に配慮し、なおかつ小坪の活性化や五輪後のことも含めて考えなければならない。スケジュールを考えれば期限が迫っていますから、28年度中に議論をすることになるのではないでしょうか」
―最後に今年1年の抱負をお願いします。
「池子の森自然公園の緑地エリアが3月中旬から限定開園し、同時に久木側ゲートもオープン、4月には桜山に『(仮称)逗子なないろ保育園』が開園する予定です。また地域自治では沼間と小坪に続き、池子でも住民自治協議会が発足します。総合計画を始め、様々なことがスタートを切った昨年。今年はそれらをさらに充実させていきたい。皆さんと蒔いた種が芽吹き、ともに育てていく。そんな1年になれば」
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