近代歴史遺産を活用した新たな観光施設が12日、江の島サムエル・コッキング苑内に完成した。かつて英国人貿易商の別荘と庭園だった時代に使われた温室遺構を活用し、植栽温室をイメージした展示体験棟に改修。「通年型観光」を掲げる市などはウィズコロナ、アフターコロナを見据えた日中観光の推進に役立てたい考えだ。
建物は鉄骨平屋造で延べ床面積は約60平方メートル、高さ約5m。国内では唯一現存するというレンガ造りの温室遺構の上に建てられる形で全面ガラス張りとなっており、室内から貴重な遺構を覗き見ることができる。
同苑前身の庭園は明治時代に英国人貿易商のサムエル・コッキング氏が私財を投じて造成。南国植物を育てるためのスチーム温室は当時、東洋一の規模とされた。棟内にはパネルや写真を展示し、コッキング氏の功績を紹介。南国由来の観葉植物も展示し、往年の雰囲気を演出した。
市は江の島を基軸にした「通年型観光」の推進を掲げており、近年はイルミネーションを中心に夜間の観光振興が奏功。一方、日中の客足増が課題となっており、同苑開設者の市と運営者の江ノ島電鉄が検討を進めてきた。再整備は2カ年事業で、来年には交流や体験ができる施設なども新設。回遊性を高め、1年を通じて楽しめる施設としてPRしていく。
12日の落成式で鈴木恒夫市長は「施設名にあるコッキング氏の由来を知らない人も多かったと思う。歴史のストーリーを発信する大変有意義な施設ができた」とあいさつ。市観光協会の湯浅裕一会長は「コロナで打撃を受けた江の島の観光業にとってうれしい限りだ」と歓迎した。
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