ベルリンから寒川町に移住した画家 熊野 海さん 岡田在住 36歳
覚悟決め 選んだ絵筆
○…住宅街の一角、元々店舗だったという扉を開くと、絵の具の香りが漂った。壁には畳のようなサイズのキャンバスが並ぶアトリエ。ここで大作が生まれている事を知る人は少ないだろう。気鋭の若手が見つめているのは、現代の不穏な空気。日常のささやかな幸せとともに、爆発や崩壊、忘却や不安感を溶かすように描く。いや、キャンバスの向こうから浸み出すようにも。
○…福井県鯖江市生まれ。陶芸家の父の影響を受け、少年時代から土をこね、ゴジラを作って窯で焼いていた。陶芸の世界では心をこめて形作ったものが焼く最中に割れてしまったり、他の作品の爆発に巻き込まれる理不尽さもあった。東京藝術大学でも陶芸を専攻していたが、卒業後に画家への転身を決めた。絵には陶芸のような「用の美」はない。「いいねと言われなければゴミでしかないんです」。より純粋な美術を求めて親とぶつかり、家業を捨てる覚悟で絵筆を握ったものの、キャンバスを前に描けなかった。故郷を離れ、ひきこもりも経験した。若手の登竜門とも言われる展覧会の締切を知り、何とか仕上げた1枚が入選。これを期に岡本太郎現代芸術賞展などで評価されるようになった。
○…助成金を受けて在外研修員としてドイツに滞在し、その刺激は今も画風を変容させている。芸術真っ盛りのベルリンから寒川に移ったのが2年半ほど前。たまたま作品が入る天井の高い物件に出会えたというのが理由だ。きりりと結んだ口を緩め「元々人ごみが苦手なので丁度いい。都内へも行きやすい」。描き疲れたら清々しい空気を求めて寒川神社へ。ご近所からの野菜やおかずのお裾分けに感動しつつ、画家はもうすぐパパになる。寒川での子育てはどんな刺激になるだろうか。
|
|
|
|
|
|
<PR>